ブラジルW杯 列強国の開幕直前ポイントチェック|スペイン編

2014年06月10日 アリツ・ガビロンド

「集大成」に懸ける強い意気込み。

シャビ(手前)とカシージャス(奥)は、おそらくこれが最後のワールドカップ。メジャー大会4連覇という偉業で有終の美を飾ろうと、強い意気込みを抱いているはずだ。 (C) Getty Images

 いよいよ開幕が迫ったブラジル・ワールドカップ。覇権を争う、いわゆる列強国は、どのような状態で大会を迎えようとしているのか。8つのポイントから現状を診断した。
 
 前回の覇者で、EURO(欧州選手権)を合わせたメジャー大会を3連覇中のスペインをポイントチェック。
 
【スペイン】
前回大会:優勝
今大会初戦:6月13日 オランダ戦(グループB)

Q1 23人の人選は?
 
満足
 
 慎重に慎重を期した人選だった。時間を目いっぱい使い、怪我の回復を見極めたうえで選出したジエゴ・コスタはその代表例。過去の実績を重視しながら、巧みに新戦力を融合し、理想的な陣容となったと言える。
 
 最大の誤算は、シャビの代役として期待の大きかったチアゴ・アルカンタラが怪我で外れたこと。ただし、それ以外は順当で、ヘスス・ナバス、ビクトール・バルデス、フェルナンド・ジョレンテといった落選組については、いずれも控えという位置づけであり、大きな痛手とはならない。
 
Q2 チームの仕上がり具合は?
 
まずまず
 
 長いシーズンを終えてそのまま大会に臨むわけだから、当然万全の状態にはない。ただ、これはスペイン代表がビッグトーナメントに出場するたびに直面する試練であり、前回のワールドカップ、2年前のEUROもそうしたハンデをチーム力でカバーして優勝を果たしている。
 
 完成されたチームに、異質の存在と言えるD・コスタが順応できるかどうかは未知数。とはいえ、現代表随一の得点力に加え、周囲を活かす献身性を兼ね備えているだけに、使い方さえ間違わなければ大きな戦力になる。
 
Q3 キャンプインからここまでチームの雰囲気は?
 
最高
 
 チームワークの良さは現代表の大きな武器。今回もイケル・カシージャス、シャビ、アンドレス・イニエスタという重鎮を中心に結束力は強い。
 
 セスク・ファブレガス、D・コスタ、カシージャスの周辺が移籍問題で騒がしい。その影響が懸念されるとはいえ、これもある意味毎度のことだ。こうした問題への対処法は、ビセンテ・デル・ボスケ監督も、選手たち自身も、いわばお手の物。本番が近づくにつれ、チームも周囲もおのずとワールドカップモードに入り、ムードは高まっていくはずだ。
 
Q4 最大の楽観材料は?
 
「集大成」に懸ける意気込み
 
 このブラジル大会は、08年のEUROからメジャー大会3連覇という偉業を達成した選手たちにとって集大成となる舞台だ。ブラジルというシンボリックな聖地で、有終の美を飾ろうという意気込みは非常に強い。
 
 若手の突き上げもプラス材料だ。しかもコケ、セサル・アスピリクエタというその新戦力は、いずれもビッグクラブの主力。イスコさえ落選した厳しい生存競争を勝ち抜いてメンバー入りを果たした2人の実力に、疑問の余地はない。
 
Q5 最大の懸念は?
 
シャビのコンディション
 
 34歳という年齢、衰えを感じさせたバルサでのパフォーマンスを考えると、シャビにフル稼働を求めるのは酷だろう。コケ、サンティ・カソルラ、ダビド・シルバが、その不足分を埋める活躍を見せられるかが鍵を握る。
 
 シャビの代役候補の筆頭だったチアゴの不在と、ボリビア、エルサルバドルとの強化試合で改めて浮き彫りとなった前線の得点力不足が、絶対的司令塔のコンディションの不安を致命傷にしてしまう危険性もある。

次ページ「ポスト・シャビ」の呼び声が高い卓越したパスワーク。

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