【現地発】いまバルサを牛耳るもの…それは独自のアイデンティティーではなくメッシの“目”だ

2018年03月30日 エル・パイス紙

巨額を投資してもスタメンの顔ぶれは…。

メッシの要望に応じたチーム作りはすでに始まっているが、今シーズンに関しては、すべての新加入選手が戦力になりきれているわけではない。(C)Getty Images

 近年のバルセロナはリオネル・メッシの影響力が加速度的に増している。

 ヨハン・クライフの死(2016年3月)とネイマールの退団(2017年8月)、それに伴うアイデンティティーの礎の喪失という事態に恐れをなしたクラブ幹部が、事あるごとに「背番号10」の"目"を気にするようになったのが背景としてある。

 昨年11月にバルサは、メッシと2021年まで契約を延長した。一連の交渉の中で、金銭面に加えメッシサイドが強く要求したのが、「すべてのタイトルの獲得をめざせる陣容を用意する」という戦力面での保障だった。

 とりわけ、近年のメッシは走る量を調整しながら、要所にプレーに絡んで試合を支配するというプレースタイルの司令塔化が着実に進行している。チームにおける存在感はこれまで以上に高まっており、そんな絶対的なエースの要望にジョゼップ・マリア・バルトメウ会長が応えないわけにはいかなかった。

 その結果が、ネイマールの退団に端を発した巨額投資だ。その大盤振る舞いぶりは、ネイマールの売却で得た2億2200万ユーロ(約286億円)という破格の軍資金ですらすでに底をついてしまうほどで、おかげでクラブ全体の予算で人件費が占める割合は危険水域の80%を超える事態となっている。
 
 この危険な賭けを正当化させるには、チームが勝ち続け、バルサブランドを向上させつづけるしかない。

 ただ、それほどの投資をしたにも関わらず、ウスマンヌ・デンベレは怪我続きで、マルロン・サントスとジェラール・デウロフェウは夏と冬にそれぞれニース、ワトフォードにレンタルで放出し、ジェリー・ミナは招集外が続いていて、ネウソン・セメドはセルジ・ロベルトの控え止まり。フィリッペ・コウチーニョは冬に加入したばかりだけにまだ判断しかねるところだが、ここまで高額の移籍金に見合った活躍を見せているのはパウリーニョのみという有様だ。

 それでもチームが開幕以来、快進撃を続けられているのは、エルネスト・バルベルデの卓越した采配を追い風に、プレーレベルを向上させたメッシをはじめとした重鎮たちの活躍が突出しているからに他ならない。

 実際、2014‐15シーズンにチャンピオンズ・リーグを制した当時のメンバーと比べてみると、先発の顔ぶれにほとんど変化がないことがわかる。ネイマールの代役としてバルベルデ監督がさまざまな選手を使い分けている以外、新たにスタメンに定着した選手はダニエウ・アウベスとハビエル・マスチェラーノに取って代わったセルジ・ロベルトとサミュエル・ウンティティのふたりしかいない。
 

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