【番記者通信】偉業達成とともに見えてきた新たな動き|R・マドリー

2014年05月27日 パブロ・ポロ

カシージャス以上の存在感を放ったS・ラモス。

CL決勝で貴重な同点ゴールを決めたS・ラモス。主将のカシージャスもその影響力の大きさを認める。 (C) Getty Images

 レアル・マドリーがついに10度目のチャンピオンズ・リーグ制覇、いわゆる「La decima(デシマ)」を成し遂げた。この日の主役をあげるなら、それはセルヒオ・ラモスになる。90+3分に決めた同点弾は、今後も長い間語り継がれるだろう。
 
 指揮を執ったカルロ・アンチェロッティにも目を向けるべきだ。イタリア人指揮官は今回の優勝で、自身が「チャンピオンズ・リーグを獲るために生まれてきた監督」であると証明した。アンチェロッティにとっては、これが通算3回目の欧州制覇だ。ただ、リーガを捨てたことで、クラブ内にナーバスな空気が流れていたことも確かだ。リーガ優勝の可能性が残っていたビーゴでのセルタ戦で、選手をモチベートできなかったことを理由に批判する人もいたのだ。
 
 しかし、アンチェロッティはこのクラブに大事なことを教えた。冷静さを失わず、クールにデシマをもたらした。指揮官の落ち着きと経験が、悲願を達成できた最大の理由だろう。このタイトルは、彼の長期的な政権を約束するものになる。移籍市場でもフロレンティーノ・ペレス会長は、アンチェロッティの考えを最大限に叶えるはずだ。
 
 クラブ内で得た情報では、来シーズンに向けての最重要課題は中盤の補強だ。優先されるのはシャビ・アロンソの代役の確保。アシエル・イジャラメンディでも、サミ・ケディラでもそれが務まらないことは、アロンソが出場停止だった決勝の戦いぶりを見ても明らかだ。
 
 ただし、ユベントスのポール・ポグバの獲得はないといっていい。ペレスが、個人的に興味がないというのだ。まだリストアップ中だが、来シーズンは確実にMFのビッグネームが加わることになるだろう。
 
 デシマは、いくつかの新たな事実を提示した。そのうちのひとつが、このチームの本当の主将はS・ラモスだということだ。もちろんキャプテンはイケル・カシージャスで、S・ラモスは第二キャプテンに過ぎない。しかし、いまやその存在感はカシージャスを上回るものだ。カシージャスもそれを理解し、S・ラモスにチーム内での発言や行動をより認めさせるようになっている。
 
 そしてもうひとり、来シーズンのチーム内でその立場を上げる選手がいる。クリスチアーノ・ロナウドだ。彼はすでにリーダーのひとりとしてチームを引っ張っている。新シーズンはカシージャスとS・ラモスに次ぐ、副主将のひとりになるだろう。
 
 ペレスは待ちに待ったデシマを手にした。これは彼が取り憑かれていたものだっただけ、今は解放された気分だろう。ペレスにとっては特別な思いがあった。2年前のこの週に亡くなった、妻のピティーナのためのデシマだったからだ。
 
 カップを手にしたペレスがリスボンの夜空に思い描いたのは、夫人の姿だったにちがいない。
 
【記者】
Pablo POLO|MARCA
パブロ・ポロ/マルカ
スペイン最大のスポーツ紙『マルカ』でレアル・マドリー番を務める敏腕記者。フランス語を操り、フランスやアフリカ系の選手とも親密な関係を築いている。アトレティコ番の経験もあり、首都の2大クラブに明るい。
 
【翻訳】
豊福晋
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