【現地発】乾のエイバルや柴崎のヘタフェら“スモール4”の躍進が、リーガの後半戦を盛り上げる!

2018年02月27日 エル・パイス紙

ファンの獲得や若手争奪戦でも大きなハンデが。

(左上から時計回りに)エイバル、ヘタフェ、レガネス、ジローナの“スモール4”はいずれもこの時期まで10位前後をキープ。さらなる躍進が期待される。(C)Getty Images

 今シーズンのリーガ・エスパニョーラは、エイバルやヘタフェを筆頭にスモールクラブの躍進が目立っている。前者は9位で後者は11位。1部初昇格を果たしたジローナも10位につけており、レガネスも13位と健闘している。

 この"スモール4"は、いずれも1部での実績が乏しく、年間予算でも下位4位を独占。そして、エイバルの場合はアスレティック・ビルバオ、ヘタフェとレガネスの場合はレアル・マドリーやアトレティコ・マドリー、ジローナの場合はバルセロナと、本拠地を構える町と地域に巨大な影響力を誇るビッグクラブがそれぞれ存在し、新規ファンの獲得や若手の争奪戦においても大きなハンデを背負わされている。

 そうしたさまざまな困難を克服しながらも経営を立て直し、1部リーグを戦う4チームは今シーズン、いずれも叩き上げのスペイン人監督の下で快進撃を見せている。

 25節終了時点で6位のセビージャとの勝点差は、エイバルが4、ジローナは5、ヘタフェは6、レガネスは9と、今後の戦い次第ではヨーロッパ・カップ戦の出場権を獲得できる可能性を十分に残している。なかでも期待大なのが、今冬の移籍市場で着実に弱点を補う効果的な補強を敢行したエイバルとヘタフェ。この2チームの躍進の理由を探ってみた。
 エイバルは、現在1部リーグに所属する20チームの中でもっとも人口の少ない町(2万7414人)を本拠地にする。かつて"2部の名門"と言われたクラブは、2014年に初昇格を果たして以来、1部で躍進を続けている。

 合言葉は「身の丈に合った堅実経営」だ。

 補強をする際もあらかじめ定められた予算額の範囲を超えることは決してない。争奪戦を制する上では不利となるが、スポーツ・ディレクターのフラン・ガラガルサはそうしたハンデを克服するための明確な対策があるという。

「我々は他のクラブに先んじてアクションを起こすことを心がけています。狙いをつけた選手の代理人とは頻繁に連絡を取り合い、獲得すると決めたら交渉期限を設定して、ストレートに我々の意思を伝える。ここでもたもたしていると、他のクラブに先を越されてしまいますからね」

 クラブは1部昇格後、新たに株主を募った結果、経営規模が拡大。その恩恵を受け、以前なら予算の限界で獲得できなかった選手も補強できるようになった。昨夏にクラブ史上最高額の350万ユーロ(約4億5500万円)でスポルティング・リスボンから獲得したDFのパウロ・オリベイラはその最たる例だ。

 さらに株主の増加はスタジアムの増築と改修をも可能にし、その結果、収容人数は7083人から8100人に増加。年々、成長を続けているエイバルであるが、身の丈に合ったクラブ経営は不変である。

 一方のヘタフェは今シーズンの昇格組だが、2015-16シーズンに2部に降格するまで12シーズン続けて1部に君臨しつづけた。1部復帰に向けての昨夏のチーム作りにおいても、そうした過去のノウハウをもとに進めたと、スポーツ・ディレクターのラモン・プラネスは振り返る。

「プレーオフを経ての昇格決定(6月24日)だったため、他のクラブに比べて大きな後れを取っていた。だから、監督(ホセ・ボルダラス)の続投が確定した後すぐに彼の希望に沿った獲得候補をリストアップしたよ。1部でみずからの実力を試すことに飢えた、ハングリー精神旺盛な選手たちをね」

 プラネスSD曰く、その際に重視したのが若手とベテランの融合だという。その方針に則ってこの冬にもロイク・レミ、マテュー・フラミニという実績豊富な両ベテランが加入。柴崎岳も含めたこうした国際色豊かな選手の存在は、クラブの知名度の向上に寄与している。

 今シーズンのホームスタジアムの観客動員の大幅な増加、そして過去の記録(1万2000人)を更新したクラブ史上最多のソシオ数は、そうしたクラブ関係者のさまざまな努力の成果でもあるだろう。


文●ゴルカ・ペレス記者、アレハンドロ・プラド記者、フアン・I・イリゴジェン記者(いずれもエル・パイス紙)
翻訳:下村正幸
※『サッカーダイジェストWEB』では日本独占契約に基づいて『エル・パイス』紙の記事を翻訳配信しています。
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