【なでしこジャパン】悲願のアジアカップ初制覇はなぜ達成できたのか?

2014年05月26日 西森彰

周囲に大きな影響を与えた宮間、福元の存在。

欧州組は招集できなかったが、キャプテンの宮間ら既存の主力選手が、若手の奮闘を引き出した。 (C) Getty Images

 海外組の過半数が揃わず、苦戦が予想された女子アジアカップ。佐々木則夫監督率いるなでしこジャパンは、そうしたネガティブな見方を覆し、初優勝を飾った。タイトルを勝ち取った本人たちでさえ「(勝因は)それが分かれば、もう一度(優勝)できると思うのですが、まだ分かりません」(宮間あや)と言うが、外から見ていて感じたポイントをいくつか挙げてみたい。
 
1 チームをまとめた宮間あやのキャプテンシー
 
 今回のチームは初招集の選手も多く「最初からひとつになるのは難しかった」(宮間)。それが、試合を追うごとにチームとしての体を為していく。サブ組だけの練習では、宮間自身がそれぞれの選手へのメッセージを書き込んだペットボトルを託してモチベーションを保たせ、若手には気になった箇所を逐次、指摘していった。
 
 その姿勢は「ピッチ外での素晴らしい仕事にも敬意を抱いている」(佐々木監督)「オンでもオフでも視野が広い」(小原由梨愛)と周囲が称えるほど。
 
 決勝では、交代選手としての義務を伝えたサブ組の選手が途中出場で発奮。宮間は「菅澤(優衣香)、吉良(知夏)が、自分のやるべき役割を果たすように努力し、ボールを追いかける姿に感動した」と振り返ったが、それを引き出したのは自身のキャプテンシーだった。
 
2 守備組織を構築した福元美穂の声
 
 年明けのアルガルベカップから、正GK争いは若い山根恵里奈を中心に展開してきた。直前の壮行試合、今大会の開幕戦も山根が先発。身長では山根より20センチ以上も低い福元美穂だが、飛び出しとセービングでは一日の長がある。
 
 何より、経験に裏打ちされたコーチングで、他の選手を動かせる。「川村(優理)が入り、最終ラインの構成が変わった。バランスをコントロールできるGKがいいという判断で」、佐々木監督は、準決勝から福元を起用する。
 
 これで川村のパフォーマンスが向上。同時にディフェンスリーダーの岩清水梓の負担も軽減され、準決勝、決勝のゴールを呼び込む遠因にもなった。

次ページAFCとの粘り強い交渉が決勝で生きる。

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