移り変わる欧州クラブの勢力分布――今シーズンはスペインが完全制覇

2014年05月22日 サッカーダイジェストWeb編集部

ある国の優勝とはつまり、その国のサッカーの勝利でもある。

チャンピオンズ・カップ創設年から5連覇を果たしたR・マドリー。今シーズンもマドリードの街は欧州サッカーの首都となった。 (C) Getty Images

 1955年に欧州ナンバーワンクラブを決めるチャンピオンズ・カップが創設されたことで、欧州のクラブシーンからは、国というものの色合いがより引き出されるようになってきた。ある国のクラブが優勝するということは、その国のサッカーの勝利にもなったのだ。
 
 その意味で、大会創設からレアル・マドリーが5連覇を果たした時、欧州サッカーの中心は間違いなくスペインにあった。その強さは少なからずスペイン代表チームにも還元され、64年に欧州選手権(当時はネーションズ・カップ)という初のメジャータイトルを獲得している(ワールドカップでは予選敗退とグループリーグ敗退を繰り返したが)。
 
 その後、1960年に国内カップ戦の王者が集って覇権を争うカップウィナーズ・カップが、さらに1971年にUEFAカップが創設され、チャンピオンズ・カップとともに「欧州3大カップ」と呼ばれるようになった。
 
 この3つのタイトルをどの国のクラブが勝ち取るかは毎年の大きな興味であり、最も権威があるチャンピオンズ・カップを含めた複数のカップ戦を制覇することは、「その国のサッカーの繁栄ぶりの証である」というのは言い過ぎとしても、その時々の勢力分布をある程度は正確に表わしていたと言えるだろう。
 
 その視点で過去を振り返ると、最初に複数のタイトルを獲得したのはドイツで、74-75シーズンにバイエルンがチャンピオンズ・カップを、ボルシアMGがUEFAカップを獲得した。ちょうど、西ドイツ(当時)がワールドカップに優勝した後のシーズンであることと無関係ではないだろう。
 
 80-81シーズンはリバプールが欧州制覇を果たし、UEFAカップでは伏兵イプスウィッチが初(そして現時点で唯一)の国際タイトルを手に入れた。この頃、チャンピオンズ・カップではリバプールやノッティンガム・フォレストなどのイングランド勢が王座を独占しており(76-77シーズンから6連覇)、クラブシーンでは明らかにサッカーの母国の力は疑いようのないものだった。
 
 83-84シーズンにもイングランドが2タイトル(リバプールがチャンピオンズ・カップ、トッテナムがUEFAカップ)を獲得したが、85年のチャンピオンズ・カップ決勝で起こった「ヘイゼルの悲劇」でイングランド勢が欧州カップ戦から締め出されると、覇権はイタリアに渡った。
 
 80年代の頭に外国人選手の補強を解禁したイタリアの隆盛ぶりは凄まじかった。圧倒的な資金力の差を他国に見せつけて(今では考えられないが……)大物選手を世界から迎え入れたこともあり、3大カップのいずれでも上位の常連となっていく。

次ページ80年代後半から始まったイタリアによる欧州カップの席巻。

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