新星発見!「ベンゼマやラカゼットの系譜に連なるリヨン生え抜きの逸材」ウセム・アウアー

2018年02月09日 ワールドサッカーダイジェスト編集部

息子に医者になってほしいと思っていた母親も、いまでは…。

アウアーにとって今シーズンのベストゲームと言えるのが、リーグ・アン17節のこのアミアン戦だ。昇格チームに早々と先制され、そのまま1点が奪えずに嫌なムードが漂っていたが、79分に起死回生の同点弾を決めると、アディショナルタイムにもゴールをゲット。チームに劇的な逆転勝利をもたらした。(C) Getty Images

 赤丸急上昇中のニュースターを紹介する不定期連載。今回取り上げるのは、カリム・ベンゼマ(R・マドリー)やアレクサンドル・ラカゼット(アーセナル)らを輩出したリヨンの育成センターが生んだ新たな逸材、ウセム・アウアーだ。地元のクラブで純粋培養された19歳のMFは、ロシア・ワールドカップのメンバー入りが噂されるまでに急成長を遂げている。

Houssem AOUAR
ウセム・アウアー(リヨン/フランスU-21代表)
●生年月日/1998年6月30日
●出身地/リヨン(フランス)
●身長・体重/175cm・70kg
●主要ポジション/セントラルMF、トップ下、左サイドアタッカー
●A代表/未招集
●キャリアの転機 /18歳でのトップチーム昇格(16年7月)

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 オランピック・リヨネ(リヨンの正式名称)で育成され、その後フランスから飛び立っていったビッグプレーヤーは、ほぼ例外なく同じヒストリーを持っている。少年時代はもちろん、青年期に入ってからも実家で生活していたというヒストリーだ。

 偶然などではない。リヨンは、将来有望な地元の少年を隈なくリクルーティングし、自分たちの手で一人前の選手に育て上げるという強い使命感を持っている。それは、ヨーロッパ屈指と評されるリヨンの育成を支える基本理念であり、ゆえにアカデミーのどのカテゴリーにも地元出身者が多く在籍しているのだ。

 例えばサミュエル・ウンティティは、幼い頃からリヨン市内のムニバル地区で母親と生活し、22歳の時にバルセロナへ羽ばたいていった。

 また昨夏にアーセナルに移籍したアレクサンドル・ラカゼットは、ジェルラン(2015年までリヨンが使用していた旧ホームスタジアム)から1㎞ほどのメルモズ地区で、両親、兄弟とずっと暮らしていたし、現チームのキャプテン、ナビル・フェキルはすでに独立したとはいえ、現在も故郷ヴォー・アン・ヴラン(リヨン郊外)の実家のすぐ傍に居を構えている。

 そして、このリストにはウセム・アウアーも名を連ねる。

 アウアーはいま、リーグ・アン(フランス1部リーグ)でもっとも注目を集めている若手有望株。脚光を浴びるこの19歳の攻撃的MFもまた、生まれ育ったリヨン郊外のトンカン地区で両親とともに暮らしているのだ。

「家での僕はいまでもチビな息子のまま。母にはよく手伝いをさせられるんだ。6万の大観衆の前でプレーした後、家に帰ると、あれやこれややらされて(笑)。プロになっても舞い上がったりせず、気持ちも生活も落ち着いているのは家族と一緒だからだと思う」

 もともとアウアーの母親は、息子に医者になってほしいと思っていたのだそうだ。だが、違う道を選んだ息子をいまでは誇らしく感じているという。プロフットボーラーとなり、彼女自身がずっと応援してきた地元のクラブで早くもレギュラーの座を掴みつつあるのだから、それも当然かもしれない。

次ページ想起させるのは若き日のイニエスタ。

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