【現地発】コウチーニョのデビュー戦、メッシはまるで新たな相棒の誕生を歓迎しているかのようだった

2018年01月28日 エル・パイス紙

その瞬間、カンプ・ノウは地鳴りで揺れ動いた。

イニエスタとの交代でカンプ・ノウのピッチに立ったコウチーニョ。ふたりが抱擁しあうそのシーンは、将来の世代交代を暗示しているかのようでもあった。(C)Getty Images

 エスパニョールとのダービーマッチとなったコパ・デル・レイ準々決勝セカンドレグ。この日カンプ・ノウは8万人余りの観客動員数を記録した。

 ファーストレグを0-1で終え、次のラウンドに進出するには勝利が絶対条件だったという試合のドラマ性に加え、平日開催にもかかわらず、ファンが大挙して駆け付けたもうひとつの大きな理由があった。冬の移籍市場で獲得したふたりの選手、ジェリー・ミナとフィリッペ・コウチーニョにデビューの期待が膨らんでいたからだ。

 結局出番が回ってこなかった前者に対し、後者は後半途中から出場。およそ25分の短い時間だったが、バルサの選手として初めてカンプ・ノウのピッチに立ったブラジル代表MFは、両足に魔法を宿らせた稀有な才能の持ち主であることを実証した。

 67分だった。カンプ・ノウは交代を命じられピッチを後にするイニエスタの名前をフルボリュームで連呼した。代わって投入されたのは、コウチーニョ。両者が両手をタッチし抱擁を交わすシーンは、将来の世代交代を暗示しているかのようでもあった。

 その瞬間、観客の歓声と興奮にカンプ・ノウは地鳴りで揺れ動いた。

「コウチーニョはまさしくバルサ向きの選手だよ。傑出したキープ力の持ち主で、ボールを奪われることはまずない。イニエスタに瓜ふたつだ」

 ジェラール・ピケが最大級の賛辞を送るコウチーニョは、さっそくデビュー戦でその非凡な実力の一端を披露する。まず特筆すべきが、途中出場後のファーストタッチがメッシからのパスだったという事実だ。

 昨夏のネイマールの退団以来、ファイナルサードで自由自在にパスを交換できる相手を探し求めていたメッシにとって、それはまるで新たな相棒の誕生を歓迎しているかのようでもあった。

 その後もふたりは近い距離間で息の合ったパス交換を見せ、スタジアムの興奮はさらにヒートアップ。その他のシーンにおいても、コウチーニョは並みの選手なら四苦八苦するであろう密集地帯を、華麗なフェイントでひらりと抜け出し、絶妙なタイミングでパスを通しながら、周囲の選手との軽快なコンビプレーを披露した。

 さらに、バルサでは希少価値の高いミドルレンジからのシュートを試みるなど、ニューフェイスの一挙手一投足を見逃さないようにと熱視線を送り続けた観客は、そのただならぬ実力をすぐさま感じ取った様子だった。

 エルネスト・バルベルデ監督も試合後、満足そうに新加入MFのプレーを振り返った。

「コウチーニョは思い切りの良さ、局面打開力、フリーの味方を瞬時に見つける視野の広さを活かし、ゴール前で決定的な仕事をすることができる。きっとチームにとって大きな戦力になってくれるはずだ。今日もどちらに勝負が転ぶか分からない決して簡単なシチュエーションではなかったが、上々のパフォーマンスを見せてくれた」

 この日の試合前、バルセロニスタに最後の別れの挨拶を行なったハビエル・マスチェラーノから「背番号14」を引き継いだコウチーニョは、ミカエル・ラウドルップばりの"クロケタ"(スペイン語でコロッケの意味。サッカー用語ではダブルタッチによるドリブルを指す)で、エスパニョールMFビクトール・サンチェスの股を抜いたかと思えば、雪のような繊細なタッチによるボールコントロール、あるいは足裏を効果的に使ったフットサル仕込みのテクニックを、わずかなプレー時間の中に散りばめた。

 最大のハイライトは、メッシからのパスを受けて左サイドの敵陣深くからルイス・スアレスにクロスを供給した場面だったが、シュートは惜しくもパウ・ロペスの好守に阻まれた。

 逆転で8年連続のコパ・デル・レイ準決勝進出を果たし、期待の新戦力がアスルグラーナ(青とエンジ)のユニホームに袖を通して評判に違わぬプレーを披露。最強の名を欲しいままにしつつあるバルベルデ・バルサの勢いは、いまだ止まる気配を見せない。

文●ジョルディ・キシャーノ(エル・パイス紙/バルセロナ番記者)
翻訳:下村正幸
※『サッカーダイジェストWEB』では日本独占契約に基づいて『エル・パイス』紙の記事を翻訳配信しています
みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事