【番記者通信】サーニャにサポーターの声は届かず?|アーセナル

2014年05月16日 ジェレミー・ウィルソン

「残ってほしい、残ってほしい…」

契約満了のサーニャは退団が必至。チームに及ぼすダメージは小さくない。 (C) Getty Images

 WBAとのホーム最終戦(5月4日の37節)を終えると、アーセナルの選手たちはサポーターへの感謝の気持ちを込め、エミレーツ・スタジアム内を一周した。すると、満員に膨れ上がったスタンドから、こんな歌声が鳴り響いた。
 
「残ってほしい、残ってほしい。バカリ・サーニャに残ってほしい」
 
 今シーズン限りで契約が切れるサーニャに向けて、何度も何度も繰り返されるチャント。ファンの眼差しを一身に浴びたフランス人は、手を振ってその声に応えるだけだった。
 
 クラブは契約更新を望み、何度か条件を提示したが、合意は得られなかった。サーニャは契約を更新するつもりがない旨を示唆しており、退団はもはや決定的だ。噂されるマンチェスター・シティかパリ・サンジェルマンへ移籍することになりそうだ。
 
 サーニャが北ロンドンにやって来たのは2007年7月。それからアーセナルは何ひとつタイトルを獲得していない。5月17日のFAカップ決勝で念願のトロフィーに手が届く可能性はあるものの、ハルを破って8シーズンに及んだ無冠時代に終止符を打ったとしても、残留の望みは薄い。このFAカップ決勝が、ほぼ間違いなくサーニャにとってアーセナルでのラストマッチになる。
 
 31歳のベテランの退団は大きな痛手だ。失うのは世界屈指の右SBであり、その経験が失われるもの痛い。緊急時にはCBをこなすユーティリティー性も貴重だった。さらに、サミア・ナスリ、ガエル・クリシ、コロ・トゥーレ、エマニュエル・アデバヨールがそうしたように、マンチェスター・Cへ移籍となれば、国内のライバルを利する二重の痛手になる。
 
 すでにアーセン・ヴェンゲル監督は、サーニャに代わる右SBのスカウティングを開始している。フランクフルトのセバスティアン・ユンク、サウサンプトンのカラム・チェンバースなどが噂されているが、はたしてヴェンゲルはいかなる補強プランを練っているのか。
 
 サーニャの残留を訴えたサポーターを裏切らないためにも、後任選びは失敗できない。
 
【記者】
Jeremy WILSON|Daily Telegraph
ジェレミー・ウィルソン/デイリー・テレグラフ
英高級紙『デイリー・テレグラフ』でロンドン地域を担当し、アーセナルに精通。チェルシーとイングランド代表も追いかけるやり手で、『サンデー・タイムズ』紙や『ガーディアン』紙にも寄稿する。
 
【翻訳】
田嶋康輔
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