なぜ松井大輔は36歳での再渡欧を決断したのか「いればこそ味わえる醍醐味がある」

2018年01月12日 川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)

「日本人選手の市場価値はどうやっても低い」

欧州の舞台に立ち続ける松井。稀代の名アタッカーを駆り立てる原動力とはなんなのか。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

 現在ポーランド2部リーグのオードラ・オポーレでプレーする、元日本代表MF松井大輔。これまでフランス、ロシア、ブルガリア、ポーランドを渡り歩いた名手は、昨年の夏、ジュビロ磐田から再び新天地を欧州に求めた。
 
 36歳での決断。松井には松井なりの、揺るがない価値観がある。
 
「日本は経済大国です。そっち方面では世界でも上位なんでしょうけど、サッカーに関してはFIFAランキングを見ても分かるように、50位くらいなんですよ。その国のJリーグの選手がフランスやスペインの2部リーグのクラブに入団する。それって、むっちゃ上に行ってるじゃないですか。だから23歳でル・マンに行ったときも、僕のなかではまったく迷いなんてなかった」
 
 とかく日本では欧州4大リーグがもてはやされ、しかもそのトップリーグのクラブへの移籍が成功への近道と見られがちだ。だからだろう。2004年夏に松井が京都サンガからフランス2部のル・マンへ移籍した当初は、「なんだ2部か」「大したことないな」という的外れな見方が少なからずあった。だが松井は、そんな風潮に真っ向から反論する。
 
「僕が行った当時もそうだったけど、『2部へ行くんや』じゃなくて、『2部に行ったんや』という感覚で捉えてほしいんです。(イビチャ・)オシムさんも何回か言ってました。『日本ではどうしても2部に行くことに抵抗があるようだが、どういうことか分からない』と。日本のほうが生活水準は上なのかもしれないけど、それと同じ感覚でヨーロッパのサッカーを見るのは違う。世界で見れば、日本人選手の市場価値はどうやっても低い。2部でも獲ってくれるチームがあるならすごく意味のあることなんですよ。日本のサッカーはやっぱり、あっちではあまり見られてない。年間数人しかヨーロッパに行ってないし、それこそ何十億円の移籍金とか金額が跳ね上がった選手なんてほとんどいないんです。そこを忘れてはいけない。上を見るんじゃなくて下を見てみよう。そこから上がっていくのが普通の考え方やと思います」

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