【鹿島】「ワイワイとかするつもりはない」8年ぶり復帰の内田篤人の悲壮なる覚悟

2018年01月10日 広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

「なんかこう、ガツンと言われた気がする」

8年ぶりの鹿島復帰を果たした内田。無冠に終わった昨季を振り返り、「去年はチームの一員ではなかったけど、すごく悔しかった」という。写真:徳原隆元

 内田篤人らしい気配りだった。
 
 1月9日の鹿島アントラーズの始動日、練習後にそのままピッチ上でテレビの取材が行なわれた。その後はペン記者による囲み取材は予定されていなかったようだが、内田は「じゃあ、歩きながらでも」と、ピッチからクラブハウスまでの道のりで取材に応じる意思を伝える。ゆっくりと歩く内田の周りを、多くの記者が取り囲んだ。
 
「パッと周りを見ると、誰もいなかったり」
 
 8年ぶりの古巣復帰だ。当然、知らない選手のほうが多い。練習前は盟友の小笠原満男と談笑する姿もあったが、ランニング中に気づけばひとりで黙々と走る場面もあった。
 
「向こう(ドイツ)に行って、俺、そんなにしゃべるほうでもなかったし。ドイツでは、練習が始まればピリピリしていて、無駄話はしない。そのクセがついていましたね」
 
 若い安部裕葵から話しかけられることもあったが、積極的に自分から誰かに声をかける素振りはほとんど見せなかった。
 
 それは内田なりの覚悟の表われでもあるのだろう。
 
「そんなにベタベタする必要はないと思いますよ。ある程度のコミュニケーションは大事ですけど、仲良しこよしのチームではないですから。ワイワイとかするつもりはない。タイトルを獲るためなら、練習中から厳しくやるつもりです」
 
 月並みな意気込みは口にしない。むしろ「勝ちは約束できない」ときっぱりと言う。それは、タイトルを獲る難しさを十分に理解しているからだ。ドイツでは「優勝の仕方とか勝ち方というよりも、"勝てない難しさ"を知った」という。
 
 常勝軍団と言われる鹿島が無冠に終わった昨季についても、思うところがあるようだ。
 
「今までは、アントラーズっていう名前でタイトルを獲れていたかもしれないけど、なんかこう、ガツンと言われた気がする」
 
 リーグ戦では最終節まで首位に立ちながらも、最後の最後で川崎フロンターレにひっくり返された。内田自身、「自分もすごく悔しかった」。それと同時に、改めて"タイトルはそんなに甘くない"というメッセージとして受け止めたのだろう。
 
「だからもう一回、見つめ直して。なんて言ったらいいか分からないけど、アントラーズらしく、しっかりとコツコツやるんじゃない。派手なクラブとは思わない。でも、強くて、伝統があって、良いチームだから」
 
 愛すべきクラブが再び、栄冠を掴むために――内田のモチベーションはすこぶる高い。
「ミーティングルームにあるクラブのエンブレムを見ると、やっぱり、やらなきゃなって気持ちになりました」
 
 終始、穏やかな口調だったが、言葉の端々からは並々ならぬ決意が感じられた。
 
取材・文●広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)

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