【選手権】決められなかった青森山田・中村駿太の悔恨…黒田剛監督はあえて厳しく「ストライカーの差」ときっぱり

2018年01月04日 川端暁彦

「もっともっとこの舞台で、この仲間たちとやりたかったという思いが強かった」(中村)

柏U-18から青森山田へ“移籍”した中村にとって、今回が初めての選手権だった。写真:田中研治

[高校サッカー選手権・3回戦]青森山田 0-1 長崎総科大附/1月3日/フクアリ

「一発中の一発を決めてきた(長崎総科大附のFW)安藤瑞季と、決められなかったウチの選手たち。厳しいようだけれど、その差が結果です」
 
 青森山田の黒田剛監督は0-1の敗戦に終わった3回戦をそんな言葉で振り返った。単純にチャンスの数を比べれば青森山田の快勝だろうけれど、サッカーはゴールの数を競うスポーツ。黒田監督は「ストライカーの差」とハッキリ言ったし、モンテディオ山形への加入が内定しているFW中村駿太にもあえて厳しい言葉をかけたと言う。これからより厳しい舞台に旅立つ選手に対し、必要なのが甘い慰めでないことは分かっているからこそだ。
 
「それが今の自分。その事実をしっかり受け止めないといけない」
 
 中村もそう振り返る。この試合の中で、まさに"一発中の一発"を求められる場面は最後の最後に訪れた。ワンツー崩れのような形で絶妙に抜け出した中村の前にいるのは相手GKのみ。シュートコースが消えていたわけでも、時間的な余裕がゼロだったわけでもない。何より「ずっと練習してきた、自分が今まで自信を持ってきた形のシュートでした」。
 
「ファーストタッチまでは完璧に決まったんだけど、力んでしまっていた。もうワンテンポ余裕を持てたはずだし、思ったように打てなかった」(中村)
 
 残ったのは、まず強烈な悔恨。
 
「試合が終わってからも、あのシーンがずっと頭に浮かんできて。これからもずっと忘れられないんだろうな、という。今までもよく決めてきた角度だったのに、この切羽詰まった状況で決め切れなかった」(中村)
 
 だが、それだけでもなかった。高校3年生にして柏レイソルU-18から青森山田へと遙々"移籍"してきた中村にとって、これが初めての高校選手権。漠然とした憧憬はあっても、具体的な感触は持てていなかった舞台である。そこへ濃密な1シーズンを過ごした仲間たちと臨んだ。
 
「いろんな舞台を経験してきたけれど、ここまで楽しかった経験はあまりなくて……。選手権、本当に楽しかった。もっともっとこの舞台で、この仲間たちとやりたかったという思いが強かった」(中村)
 
 シーズン半ば、新しい環境での新しい役割を求められる中で少し苦しんでいる印象もあった。「自分が入ることで誰かひとり、外れる選手がいるので、自分はまず結果を出さないといけない」と責任感を背負い込みながら、特殊なプレッシャーにさらされながらの日々だったことは想像に難くない。ただ、だからこそ成長したモノもあったはずだ。
 
 エースに対して厳しい言葉を残した黒田監督も「でも、あいつはこれからだから」と、1年限りの教え子がプロのステージで花開く未来を願った。
 
「今までで一番楽しい試合だったと思います」
 
 バスに乗り込む直前、中村は悔恨を残したはずの試合についてそんな言葉を残した。少々強がりも入っているのかもしれないが、1年前の決断に後悔はないのだということは十分に伝わった。中村駿太は忘れられない悔しさを糧に、「モンテディオの中村」として新たな戦いを始めることとなる。
 
取材・文●川端暁彦(フリーライター)
 
みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事