【選手権】最初で最後の選手権で初ゴール!青森山田のエースを解き放った本田圭佑の言葉

2018年01月03日 安藤隆人

『ゴールはケチャップのようなもの。出ない時はなかなか出ないけど、一度出たらドバドバ出る』

青森山田の中村は、草津東戦で2ゴールを挙げ、勝利に貢献した。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

[高校サッカー選手権・2回戦]青森山田5-0草津東/1月2日/フクダ電子アリーナ
 
 青森山田のFW中村駿太が、最初で最後の選手権で初ゴールを含む2ゴールを奪った。まさにエースストライカーの意地が生み出した2ゴールだった。
 
 これまでずっとゴールが遠かった。プレミアイーストでも10節の浦和レッズユース戦以降、1点も獲れず。優勝が懸かった最終節のFC東京U-18戦でも不発に終わり、チームも2連覇を逃した。
 
「悔しいです。というより、情けないです。ずっと点を獲れていないことを考えてしまって……」
 
 もやもやする日々を過ごしたが、選手権開会式の日には表情が一変していた。
 
「もうあまり気にしないようにしました。点が獲れないことを気にしていると、1本外したりしたら、どんどんマイナス思考になってしまう。それは悪循環だと気付いたんです。今は点を獲るという強烈な意志は持ちながらも、獲れていないことは気にしない。なので、選手権が楽しみで仕方がありません」
 
 ゴールから遠ざかると、強烈な焦りと不安を覚える。それはストライカーとしての性であり、誰もが陥ってしまうメンタル状況だ。中村も見事にはまり込んでしまった。
 
 しかし、気にすれば気にするほど、ゴールは遠ざかることに気付けた。それは日本を代表するある選手の言葉が大きかった。
 
「本田圭佑選手が『ゴールはケチャップのようなもの。出ない時はなかなか出ないけど、一度出たらドバドバ出る』と言っていたことを思い出して、『そうだよな』と思ったんです」
 
 日本代表の重鎮が放った言葉は、当時『ケチャドバ』と呼ばれて大きな話題を呼んだ。それを自らに当てはめた中村は、「真摯にゴールを目指してプレーをしていたら、いつかゴールは生まれて、積み重ねて行くことが出来る」と良い意味で開き直れた。
 
 そして草津東戦。2−0で迎えた51分に待望の瞬間がやって来た。DF鍵山慶司のスルーパスに反応すると、ふたりのDFに囲まれながらもボールキープし、少し足が掛かってよろめきながらも、踏ん張って左足を振り抜く。ボールはスピードこそ無かったが、絶妙なコースをたどってゴールに吸い込まれた。
 
 柏レイソルU-18から今年に青森山田にやって来た中村にとって、最初で最後の選手権での初ゴール。60分には見事なパス交換でバイタルエリアに入ったDF佐藤拓海の縦パスを、DFを背負いながら受けてから反転シュート。走り込んで来たMF郷家友太と同時にシュートを放ち、ゴールに突き刺した。
 
 1試合で2ゴール。まさに『ケチャドバ』が実現した瞬間だった。76分にお役御免となったが、ストライカーの待望のゴールはチームにとって大きな明るい話題となった。
 
「とりあえず点を獲れて良かった。1点目も2点目も自分の得意な形なので、シュートを振り抜くことができた。ホッとはしました。良いイメージを持って明日につなげられるかなと思いますし、つなげないといけない。この大会でチームを勝利に導くゴールを挙げ続けることが、僕を受け入れてくれたチームへの恩返しですから」
 
 安堵の表情を浮かべながらも、次なる戦いへと目を向けたエースストライカーは、自分のケチャップはこんなもんじゃない、まだまだ中身は残っていると言わんばかりに、自信がみなぎった表情を浮かべた。

取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)
 
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