【選手権】まさかの秘策がずばり! 富山一はいかにして東福岡を撃破したのか

2018年01月02日 川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)

自慢の5-3-2ではなく“対ヒガシ”の特別仕様で

劇的AT弾を決めた大竹(9番)が吼える! 富山一が強豪を撃破し、4年ぶりの日本一へ邁進。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

[高校サッカー選手権・2回戦]富山一 1-0 東福岡/1月2日/等々力
 
 PK戦濃厚と思われた後半アディショナルタイム、拮抗した名門対決の均衡がついに崩れた。富山一の右CK。DF小森颯(3年)の左足から放たれたニアへのボールがドンピシャでFW大谷将吾(3年)の頭を捕らえ、これが東福岡に引導を渡す殊勲弾となった。
 
 タイムアップの瞬間、富山一ベンチはまるで優勝したかの大騒ぎ。劇的な勝利に大塚一朗監督も、興奮を隠せない。
 
「いつもとは違う形でやって、それが上手くハマった。本当は10分、15分くらいで先に点を取って本来の形に戻そうと思ってたんですけど、ことのほかシュートまで行けてたんで、結局は最後まで同じ形でやらせました」
 
 北信越王者の最大の魅力は破壊的なアタック。その代名詞とも言えるのが、自慢の2トップ、大竹と坪井清志郎(3年)を前面に押し出す5-3-2システムだ。しかしこの試合で、大塚監督は意外にも"ヒガシ対策"を講じてきた。相手の4-1-4-1システムに対して、中盤をひし形とする4-4-2を採用。これがものの見事に奏功したのだ。
 
「2トップをいつもよりワイドに構えさせて、相手のセンターバックとサイドバックの間を狙わせた。それによって彼らの連携は取れなかったのかもしれませんが、相手のボール回しを寸断させることができたし、シンプルにカウンターからシュートまで持っていけました。昨日の練習でおさらいをしただけですが、選手たちは上手く形にハメてましたね」
 
 ほぼ80分間を通して、主導権を握り続けた。斬新なシステムチェンジで東福岡に面を食らわせ、後手に回らせたのだ。相手が矢継ぎ早に交代カードを切ってきてもディフェンス網に綻びは見られず、センターラインが抜群の安定感を誇示。とりわけ、アンカーに配された滝本敦生(3年)の奮闘が目を引いた。普段は5バックのリベロを担う守備者が、難解なタスクをまっとうしたのだ。指揮官は、「彼には両サイドがプレッシャーを掛けに行ったときのカバーと、敵のシャドーが走ったところをうまく消すようにと指示しました」と説明する。東福岡自慢の中盤でのパスワークを封じ込み、チームのアグレッシブな守備を引き出した。
 
 大塚監督は、こう本音を漏らす。
 
「システムを途中で変えて、引き込んで守備を重視しようかとも考えましたが、正直、変えられなかった。5-3-2で守るという自信が僕のなかになかったんです」
 
 明日の3回戦もまた、優勝候補の前橋育英が相手だ。はたして、いかなる作戦を選択するのか。
 
「どうしましょうかね(苦笑)。ただ今日の形で結果を出せたことで、相手もどちらで来るのか分からないところはあるのかもしれない。よく考えてみます」
 
 過去3戦全敗だった鬼門の等々力は、もはや縁起のいいスタジアムとなりつつある。4年ぶりの日本一へ、パープル旋風がタイガー軍団をも呑み込むか。
 
取材・文●川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)

【選手権PHOTO】2回戦 富山一1-0東福岡 終了間際の決勝点で富山一が3回戦に進出
 
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