【天皇杯|戦評】“戦術マルティノス”の限界と“全員攻撃・全員守備”の底力

2018年01月02日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

マルティノス頼みではさすがに限界が…

運動量で横浜を上回った印象のC大阪。なかでも決勝点を決めた水沼は最後までピッチを駆け回った。写真:山﨑賢人(サッカーダイジェスト写真部)

[天皇杯・決勝]C大阪2-1横浜/1月1日/埼玉
 
 前半途中までは横浜のゲームだった。マルティノスの個人技を頼りに比較的高かった敵最終ラインの裏を突いてリズムを掴むと、8分には下平匠のクロスから伊藤翔がまんまと先制点を奪う。これで優位に立った横浜は細かくパスをつなぎながら試合をコントロールし始めたのだ。
 
 ただ、誤算はそのパス回しに怖さがなかった点だろう。試合後にエリック・モンバエルツ監督が「セレッソの良い守備を崩すだけの攻撃ができなかった。パス回しのスピードが遅くて、ボールロストも多かった」と話していたように、先制パンチを成功させながらも追撃に失敗した。結局のところ、これが試合の流れを決定づける大きな要因となった。
 
 この日の横浜の攻め手はひと言で表現するなら「マルティノス」だったが、このキュラソー代表MFのフィジカル能力、突破力頼みの崩しではさすがに限界があり、時間の経過とともにボールの主導権はC大阪に移っていった。
 
 事実、リードされながらもC大阪の水沼宏太に焦りはなかった。そんな彼が「先にゴールを決められたけど、良い意味で落ち着いていた」のは、17年11月にルヴァンカップを制した経験があったからでもあるだろう。ユン・ジョンファン監督も「ミーティングでその部分(ルヴァンカップでの優勝)を強調した」と言うとおり、今のC大阪には"全員攻撃・全員守備"という拠りどころがあった。
 
 今季のC大阪がルヴァンカップで優勝できたのも、リーグ戦で3位に食い込めたのも、特定の誰かに依存しないサッカーで戦ってきたからだ。だから、エースの杉本健勇を怪我(左足の負傷など)で欠いた今回の天皇杯決勝でも彼らの戦い方にブレはなかった。
 
 私的な見解を述べさせてもらうなら、後半途中からは"戦術マルティノス"対"全員攻撃・全員守備"という様相を呈していたように見えた。攻撃を特定の個に依存していた印象の横浜が、山村和也のゴールで追いつかれてから流れを失うのは必然の流れだったかもしれない。

次ページ水沼のアクションがチームに勇気を与えた

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