【天皇杯】「メディアの皆さんはどう思う?」。優勝監督ユン・ジョンファンがある質問に逆質問

2018年01月01日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

指揮官が“パイプ役”として信頼を寄せていたのは…

天皇杯を制して今季カップ2冠を達成したユン・ジョンファン監督。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

[天皇杯・決勝]C大阪2-1横浜/1月1日/埼玉

 2018年1月1日に埼玉スタジアム2002で行なわれた第97回・天皇杯決勝は、C大阪が横浜を2-1で下すという結果に終わった。今季、ルヴァンカップと併せてC大阪をカップ2冠に導いたユン・ジョンファン監督はその喜びを次のように語っていた。

「結果だけを見れば嬉しい。昨季にJ2のプレーオフを制して昇格したチームが、ここまでの結果を残すことは簡単ではありません。ふたつのカップ戦で優勝して、リーグ戦で3位に入るなんて本当に簡単ではない。誰かひとりの力で成し遂げたわけではなく、クラブに関わるすべての人たちの力があってこその結果だと思います。自分が現役時代に成し遂げられなかった天皇杯優勝を監督として果たすことができて嬉しい」
 
 C大阪の監督に就任してカップ2冠とは望外の結果である。勝負弱い印象すらあったこの桜軍団を、ユン・ジョンファン監督はどう変えたのか。そうした質問が飛ぶと、当の指揮官は「昨日(試合前日)もこの質問をされましたが、逆に訊きたいです。メディアの皆さんはどう思いますか?」と切り返しつつ、自らは次のように述べた。
 
「ひとつは勝とうとする姿勢。チームとしてやろうという自己犠牲精神も含め、そういうものを皆でできた。最後まで諦めないというスタンスが身体と精神に身に付いて、それが勝利への原動力となった」
 
 ただ、想像以上にチームをまとめる仕事は大変だ。例えば反発する選手がいれば、スムーズな組織作りをするのは困難になる。そうした状況も踏まえて、ユン・ジョンファン監督が今季、大切にしていたのは「信頼」だった。
 
「互いの人格を尊重することが大事です。そのうえで、チームの目標を明確にする。そこで反発する選手がいるかもしれない。僕自身にも経験がありますから、現役時代、実際にそうなったこともありますし。でも、時間が経ってみると自分に至らない部分があったと反省しました。今の僕の立場からすると、そういう選手に変わるきっかけを与えないといけない。いずれにしても、今季のセレッソは選手、フロントが同じ目標に向かうことで良くなったと思います」
 
 確かに今季のC大阪は一体感があった。誰が試合に出ても戦い方がブレなかったのは監督の考えが選手に浸透していたからだろう。

 監督と選手をつなぐ、いわゆる"パイプ役"として重要な役割を果たしていたのがユン・ジョンファン氏の愛弟子と言うべき水沼宏太だった。
 
「この1年の成功は水沼がいたからこそ、と言っても過言ではありません。なぜなら、私の考えを選手に伝えるだけじゃなく、いろんな面で私にはできない仕事をやってくれた。キャプテンでも副キャプテンでもないですが、このチームで何かを成し遂げたい気持ちが強かったように見えました。そういう選手は本当にチームの力になる」
 
 2017年シーズンの締め括りと言うべき天皇杯決勝で、その愛弟子が決勝ゴール。今回の勝利は、ユン・ジョンファン監督のやり方が間違っていなかったことを示す証とも言えるかもしれない。
 
取材・文●白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集部)

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