【コラム】今季のJクラブが教訓的に示した「DAZNマネー」の現実的な使い道

2017年12月27日 加部 究

上海上港にはフッキ、オスカールに代表される突出した個があったが…。

今季、悲願のJ1リーグ優勝を飾った川崎は、賞金と理念強化配分金で総額約22億円を手にすることになる。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

 DAZNとの10年間契約がスタートし、昨オフのJリーグは久しぶりに補強のニュースが活発化した。
 
 神戸は元ドイツ代表のルーカス・ポドルスキと推定年俸10億円で3年契約と報じられ、FC東京は大久保嘉人、ピーター・ウタカ、高萩洋次郎、永井謙佑、太田宏介、林彰洋と、経験豊富な即戦力を買い集めた。どちらも興行的には功を奏した。神戸が9位、FC東京は13位と低迷し、いずれもシーズン途中で監督が交代したのに、前年より観客動員は増えている。しかしファンの大きな期待に反し、豪華補強の即効性は見られず、リーグが設定した理念強化分配金(1~4位までに約28億円)や、増加した賞金獲得の目論見は外れた。

 Jリーグは過渡期に差し掛かっている。選手の質や戦術的な底上げが実現し、それはACLで浦和の優勝を筆頭に、川崎、鹿島と3つのクラブがグループリーグを突破したことでも証明された。資金力では爆買いが可能な中国のクラブには到底及ばない。だが逆に中国の選手を質的に上回るメンバーが、組織的に戦い結果で凌駕した。準決勝を例にとれば、上海上港にはフッキ、オスカールに代表されるように突出した個があった。だが浦和は全員がコンセプトを共有してハードワークで対抗した。もし浦和側に守備には100パーセント貢献できないスーパーストライカーがいたら、結果は逆になっていた可能性もある。
 
 前世紀までは大物外国人を獲得すれば、ほとんどが額面通りの活躍をした。もちろんガリー・リネカーを初め一部例外はあったが、40歳でJリーグ開幕を迎えたジーコでも、守備では貢献出来なくても、それを補ってあまりある創造性で牽引した。ところが最近では、各クラブが助っ人選手をベンチに置くことが珍しくなくなった。むしろ今年優勝した川崎のエドゥアルド・ネットやエウシーニョ等を見ても、ビッグネームではなくてもチームのコンセプトに即した助っ人選びが有効なことを示している。
 
 ポドルスキが十分な能力を持っていなかったわけではない。それはおそらくC大阪が獲得し、途中から出番を失ったディエゴ・フォルランも同様だ。彼らが実績通りに活躍出来なかったのは、チーム戦術との相性が良くなかったからだ。

次ページ確実にチーム力の上積みを望むなら、オスカールではなくパウリーニョのようなタイプ。

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事