【蹴球日本を考える】横パス、バックパスが多かった2つの理由とまずい内容より残念だったこと

2017年12月10日 熊崎敬

代表サバイバルの中でミスを犯したくないという守りの意識が働いている。

終了間際に井手口の決勝弾で初戦を白星で飾った日本。しかし、内容に見るべきものはあまりなかった。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

 ずいぶんとまずい作品を見たなあ、というのが率直な感想だ。
 
 GK中村がビッグセーブを連発、最後の最後に井手口の決勝弾が飛び出したが、ほとんど負けゲームだった。収穫も数えるほどしかない。
 
 これは試合後の会見でハリルホジッチ監督が指摘したことだが、この大会の日本代表にはいくつかのエクスキューズがある。
 
 主力となる海外組が不在。代表初招集の選手が多く、このメンバーで試合をするのは初めてだ。ひるがえって北朝鮮はベストメンバー。アンデルセン監督は、平日は代表選手を招集して2部練習をやっていると明かした。つまり、北朝鮮が日本よりもずっといい準備をして大会に臨んでいるのは間違いない。
 
 だが、それを承知の上で思うのだ。
 代表経験は少なくても、Jリーグのトップクラスが集まっているのだ。もうちょっとできるでしょう、と。
 
 中村、伊東と存在感を見せた選手はいるにはいるが、総じて出来は悪かった。
 
 まず、攻撃が遅すぎる。ここで行けという場面で踏み込まず、立ち止まってバックパス、そこから横パスのリフレインが始まる。
 
 これはおそらく、代表サバイバルの中でミスを犯したくないという守りの意識が働いているのだと思う。
 理由はもうひとつある。選手たちはひとりで勝負する度胸がないのだ。いまの選手たちは幼いころから、組織だ、パスだと口やかましく言われる中で育っている。だから周りに味方がいないと不安になるのだ。味方の押し上げを待ってから崩そうとする。
 だが、自分たちの攻撃体勢が整った時には、敵もしっかりと守りを整えている。これではなにも始まらない。
 
 守りも不安定だった。再三、北朝鮮に背後を突かれた。
 谷口は1対1で何度も負けて、ピンチを招いた。このチームの中では経験豊かな昌子もミスが相次ぎ、守備を統率することができなかった。右サイドに抜擢された室屋も、最後まで地に足がついていなかった。
 
 攻撃でも守備でも、北朝鮮の選手に格の違いを見せた選手はほとんどいない。こうなるとJリーグの育成力が疑問視されても仕方がない。代表チームが不甲斐ない試合をすると、リーグの価値も下がってしまう。

次ページ互いに要求を出し合っている場面はほとんど目にしなかった。

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