【現地発】恩人との悲しき決別を経て…ケルンが踏み出した、奇跡の残留に向けての一歩

2017年12月08日 中野吉之伴

夢を見ていた。何とかなるかもしれない、と

ブンデスリーガでは14節終了時点で3分け11敗……。このどん底から這い上がり、ケルンは前例のない奇跡を起こせるか。新体制の初戦となったELレッドスター戦は0-1で落としてグループステージ敗退。今後はリーガだけに力を集中する。 (C) Getty Images

 ドイツの『ビルト』紙に、元ドイツ代表で、現在はJリーグのヴィッセル神戸でプレーするルーカス・ポドルスキがコラムを書いている。

 普段は陽気な応援エールが多いのだが、今シーズンの成績不振からペーター・シュテーガー監督が解任となると、さすがに彼も呑気ではいられなかった。
 
「遠く離れた日本にいるけど、ケルンっ子として、今の状況に涙を浮かべている。それは順位表のことだけではない。昨日発表された、ペーター・シュテーガーとの別れ。4年間、とても素晴らしい仕事をしてきたではないか。それだけに他の解決の仕方があったはずだ」
 
「これでは、敗者しかいない。ひとり矢面に立たされるのは、シュテーガーに相応しいものではなかった。これだけチームがカオスな状態に追い込まれても、彼は人として、一度も自分のラインを失うことはなかった。そのことを、私はとても評価しているんだ」
 
 ヨーロッパリーグ(EL)出場権獲得となるリーグ5位でシーズンをフィニッシュしたのは、ほんの数か月前のことだ。
 
 ケルンの街には喜びが溢れかえり、人々はこれ以上素晴らしいことはないと、美酒に酔っていた。「きっと来シーズンもうまくいくさ」。そんな言葉を交わし合ったことだろう。だがそれは「祈り」だったのかもしれない。そう簡単にはいかないことは、ファンならきっと分かっていたはずなのだ。
 
 躍進を遂げた中規模クラブは、主力選手をビッグクラブに奪われ、翌シーズンには過密日程でボロボロになっていく。ハノーファーも、シュツットガルトも、アウクスブルクも、フライブルクも……様々なクラブが苦しんだ。そんな様は、何度となく見られてきたのだ。ケルンにも同じような転げ落ちが待っていても不思議ではない。
 
 それでも、ファンはどこかで夢を見ていた。何とかなるかもしれない、と希望を失わなかった。首脳陣も、「このままではダメだ」と分かっていても、なかなか最後の一手を打てないでいた。
 
 優柔不断さが、状況をさらに悪化させたのかもしれない。もっと早く手を打っていれば、ここまで沈むこともなかったのかもしれない。あるいはポドルスキが指摘するように、別のやり方があったのかもしれない。
 
 いずれにしても、シュテーガーとの別れは、今一度、自分たちを見つめ直し、また一丸となって歩き始めるための大事な「儀式」となった。

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