北朝鮮代表の切り札は海外組?その背景には「平壌国際サッカー学校」と「海外進出ルート」の存在が

2017年12月08日 ピッチコミュニケーションズ

近年は国を挙げて選手育成に取り組む。

代表チームの指揮を執るアンデルセン監督が、選手の欧州移籍を斡旋することもあるという。写真●山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

 12月8日から日本で開かれるE-1選手権に参戦する北朝鮮代表。9日の初戦でハリルジャパンと対戦するだけに、アジアの"古豪"の内情は気になるところだろう。
 
 25年ぶりの外国人監督招聘など、同国代表には様々な変化が起きているが、とりわけ最近、関心を集めているのは海外組の台頭だ。
 
 今年3月にカリアリに入団し、デビュー2試合目で同国選手としてセリエA初ゴールを叩き込んだハン・グァンソンはその筆頭。彗星のように現れた19歳のストライカーは、レンタル移籍中のペルージャでも今季7得点を記録中である。嘘かまことか、名門ユベントスやプレミアリーグのアーセナルも興味を示しているとの報道もあったほどだ。
 
 また、ハン・グァンソンのほかにも、北朝鮮代表にはチョン・イルグァン(FCルツェルン/スイス)、パク・クァンリョン(SKNザンクトペルテン/オーストリア)など欧州リーグでプレーする選手が少なくない。いずれも代表の主力であり、海外組はチームに欠かせない存在になってきている。
 
「在日Jリーガーを除けば、現在、国外でプレーしている選手は5人。ハン・グァンソンが所属するペルージャにもうひとり、スイスにもチョン・イルグァンのほかにもうひとりいます。ふたりはまだA代表で活躍するほどではないけれど、それでも海外組が育ってきていることは間違いありません」
 
 そう語るのは、在日本朝鮮蹴球協会理事長で同国サッカー協会副書記長も務める李康弘氏だ。近年は、国を挙げて選手育成に取り組むなか、海外リーグで実力を育む選手が目立っているのだという。
 
 気になるのは、同国選手が国外クラブに加入するまでのプロセスだが、「協会側が推薦しており、選手自ら海外進出を希望することもできる」と李理事長は説明する。また、クラブ側との交渉は、エージェントのツテを使うのが一般的だそうだ。
 
「FIFAが抱える各大陸の代表エージェントに相談しています。例えばパク・クァンリョンは2011年にスイスに渡りましたが、その時もエージェントの力を借りました。イタリア生まれイタリア育ちのスイス人男性で、FIFAとも付き合いの長い代理人です。もう高齢の方ですが、彼に頼ることは多いですね。昨年5月から代表を指揮するヨルン・アンデルセン監督が、欧州のクラブに選手を紹介することもありますよ」

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