勝ち切れなかった福岡が抱えるふたつの課題。J2最少失点を誇った一方で…

2017年12月05日 中倉一志

プレーオフ決勝の0-0というスコアに福岡の現状が現れていた。

三門は「特にホームゲームで順位が下のチーム相手に取りこぼすことが多かった」と振り返った。写真●山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

  [J1昇格プレーオフ決勝]名古屋0-0福岡/12月3日/豊田スタジアム
 
「結果が出なかったことは申し訳ない。それでも、自分がやれる仕事はしたと思うし、ディフェンスラインも最後のところでは身体を張ってシュートブロックしてくれた。自分たちの粘り強いディフェンスは見せられたと思う。胸を張って福岡に帰りたい」(杉山力裕)
 
 その想いは、井原正巳監督をはじめチームに共通するものだろう。前半は高い位置からアグレッシブに守備を仕掛けて名古屋の攻撃を封印。そしてゴールチャンスも作った。後半は耐える時間が長くなったが、それでも粘り強く守りながら最後の瞬間まで決勝ゴールを目指して戦い続けた。
 
 0-0のスコアは、名古屋と拮抗した力を持っていることを証明するもので、J1昇格プレーオフ決勝を戦うにふさわしいチームであることを示した。今シーズンの集大成にふさわしい試合だったと言える。
 
 とはいえ、J1には手が届かなかった。
 
 今季の福岡は前半戦を終えた段階で2位の湘南と同勝点(43)。3位の徳島には勝点差7を付けて首位で折り返したにも関わらず、後半戦に失速した。自動昇格を逃したばかりではなく、順位を4位にまで落としたことがすべてだった。
 
「悪い時に勝点1を取る、良い時には勝点3を逃さない、そういうチームを作っていかないと自動昇格するのは難しい。自分たちはそういうゲームを逃し続けた。特にホームゲームで順位が下のチーム相手に取りこぼすことが多かった。そこで3でも、6でも積み重ねていればJ1に行けていた」と話すのは三門雄大。シーズンを通して勝ち切れない試合が多かったことが響いた。
 
 福岡が直面していた課題はふたつ。攻撃面で最後の部分を決め切る力がなかったこと。守備面では組織は整っていながら一瞬の隙を与え、勝敗を左右する重要な失点を許し続けたことだ。トータルで見れば湘南と並んでリーグ最少失点を記録したが、失点シーンを個別に見ると、まだまだ甘さが残っている。
 
 また、悔やまれるのは28節からの6戦勝ちなし(3分3敗)。38節からのラスト5試合は1敗しかしなかったが、勝利数も1にとどまった。開幕以来の課題が最後まで解消できなかったのだ。
 
 もちろん、成長の跡も見せた。三門はこれまでの1年間とこれからを、次のように話す。
 
「戦う厳しさを持つということで言えば、去年よりも確実に良くなっている。それを継続していくことが、福岡が早くJ1に戻るためには必要だと思うし、J1でやっていくためにも必要」
 
 課題を抱えながらも最後まで昇格争いを演じることができたのは、そうした成長があったからでもある。
 
「1年でJ1昇格」という目標を逃したのは、選手はもちろん、福岡に関わる人たちにとって悔しく残念なものだった。しかし、だからこそ次のチャレンジがある。
 
 最後までJ1昇格に向けて戦い抜いたことに胸を張ると同時に、自分たちの問題で逃したという事実と向き合わなければならない。そのうえで、これまで積み重ねて来たものの上に何を重ねられるか。それがJ1へ戻るための重要な鍵になる。
 
取材・文●中倉一志(フリーランス)
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