【蹴球日本を考える】J2も質の伴う試合が増加中! 甲府は群雄割拠のリーグを勝ち抜けるか?

2017年12月04日 熊崎敬

試合後は感動的な空気に包まれ、社長は1年でのJ1復帰を約束したが…。

後半アディショナルタイムに甲府はリンスが劇的な決勝点を挙げるも、J2降格が決定した。(C) J.LEAGUE PHOTOS

 終了間際、リンスの劇的な決勝ゴールが決まった瞬間、満員に近いスタジアムは大歓声に包まれた。総立ちとはいかないものの、半分近いお客さんが立ち上がって喜んでいる。
 

 この日、甲府は5年間守り抜いたJ1の座を明け渡したが、試合後、罵声が飛ぶことはなかった。落ちたといっても試合には勝ったし、レジェンド石原の引退セレモニーが行なわれたこともあって、むしろ感動的な空気に包まれた。
 甲府のファンはとても温かい。最後までゴール裏に残ってコールしていたサポーターたちは、来季もきっとスタジアムに駆けつけるだろう。
 
 試合後のあいさつでは、社長が1年でのJ1復帰を約束していた。だがそれは決して簡単ではないと思う。
 
 J2は近年、レベルが確実に上がってきている。今季の徳島や東京Vがそうだったように、予算に限りがあるチームがいい指導者を招いて、質の伴った試合をするようになった。
 昇格プレーオフを戦った名古屋や福岡、千葉のようなタレントに恵まれたチームも苦戦を強いられている。この群雄割拠を勝ち抜くには、いまの甲府ではタレントもチーム力も十分ではない。
 
 私は前節の大宮戦と、この最終節を観戦したが、甲府のいいところがなかなか見出せなかった。
 得点を決める以前にチャンスを作ることができない。チャンスを作る以前に、パスをつなぐことができない。
 
 この仙台戦も最後は勝ったものの、前半から中盤を支配された。カウンターに好機を見出そうとしたが、しっかりボールを保持できないため、すぐに手詰まりとなる。積極的に遠目からシュートを放っていたが、それは手数をかけて崩す余裕がないからだ。パスをつなぐのに精一杯で、敵の背後を取ることができない。
 現状のクオリティでは守ってカウンターという試合しかできず、成績は外国人ストライカーの当たり外れに左右されることになるだろう。
 
 Jリーグを長いスパンで振り返ると、広島や柏のように降格を糧にして、たしかな土台を築いたチームがある。湘南もまた降格や昇格に一喜一憂せず、10年、20年通じるアイデンティティを確立した。
 甲府も将来、降格が無駄ではなかったといえるためには、ボールをつなぐというサッカーの原点に向き合わなければならないだろう。
 
取材・文●熊崎 敬(スポーツライター)
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