「エンタメ性」を重視する川崎の初戴冠が投じた一石。12月2日はJリーグの歴史的転換点に?

2017年12月04日 江藤高志

表彰セレモニーで使った風呂桶は、公式グッズとして発売されることになった。

シャーレの代わりに"フロ"桶を掲げて喜びを爆発させた。写真●滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

 シャーレがないなら風呂桶で代用すればいい。
 記念すべき初戴冠の表彰セレモニーで、川崎フロンターレは「らしさ」を見せた。風呂桶はしっかりと公式グッズとして発売されることになった。
 
 そんな川崎はピッチ外でのイベントを数多く行なうことで知られている。名の通ったベテラン選手や女性サポーターを引きつけるイケメン選手でもお構いなしにバナナをかぶらせ、地域貢献活動として多摩川の清掃活動を行い、岩手県にある陸前高田市を訪れての復興支援活動をコンスタントに行ってきた。
 
 ファンサービスについては、過密日程や選手個々のコンディション、天候に問題がなければ基本的に毎日実施。練習取材も基本的にフルオープンで、麻生では非公開練習は一切行われず、取材陣の取材も基本的に制限されることはない。
 
 サポーターもとことん優しく、長年応援を続けてきたいわゆるコアなサポーターはどれだけ不甲斐ない試合で負けたとしても、決してブーイングをしない。
 
「とはいえ、ブーイングについては観客一人ひとりがどう思うかというもので、ブーイングしたければすればいいと思う」と書くと「そんな事言わないでください」とのお叱りのメールが届く。コアなサポーターが堅持する「ブーイングをしない」という応援のスタンスは等々力を訪れる多くの観客の支持を得ており、それが温かいスタジアムの空気を醸し出している。
 
 勝利至上主義のチームであれば、地域貢献活動のすべては「勝利のために」というスローガンによって不要なものとして切り捨てられかねない。同様に数年先を見越したチーム強化策も目先の勝利を重視するサポーターのブーイングによって、単調なサッカーに置き換えられかねなかった。だが、川崎はそうではなかった。
 
 鬼木達監督の指揮下で実現した初戴冠は、風間八宏前監督時代から通算すると足かけ6年に及ぶ試行錯誤の末に成し遂げられたもの。風間前監督の就任当初にしても、今季の序盤戦にしても、勝てない時期はあった。だが、もし勝利至上主義のサポーターが主流派を占めていたら、鬼木監督が引き継ぎ実現させた攻撃的なスタイルのサッカーは日の目を見ていなかったかもしれない。

次ページ中村憲剛は言う。「エンタメ要素が盛りだくさんなチームが優勝するというのは…」

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