【ベガルタ戦記】渡邉晋の『日晋月歩』|サポーターが起こす拍手とスタジアムを包む一体感

2017年12月01日 渡邉 晋

試合終了の瞬間は、充実感と悔しさが交錯した。

横浜戦は昨季のホーム最終戦を想起させる立ち上がり。しかし、「今年はここからやってくれるんじゃないか」と自然と思えた。写真:田中研治

 仙台の渡邉晋監督による現役指揮官コラム「日晋月歩」の第32回。テーマは「サポーター」だ。ホーム最終戦は先制を許したものの逆転。しかし、最終盤に失点を喫して勝ち星を届けることは叶わなかった。
 
 勝ち切れない悔しさと、仙台のサッカーを表現した充実感が交錯するなかで渡邉監督は声援を送ってくれる12番目の戦士たちに何を想ったか。試合を振り返るとともに、ある嬉しい「変化」について語ってもらった。
 
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[J1リーグ33節]仙台 2-2 横浜/11月26日(日)/ユアスタ
 
 昨季のホーム最終戦、磐田戦の敗戦(0-1)を想起させる立ち上がりだった。1年前は前半早々に(上田)康太に左足のFKをぶち込まれて、そのまま良いところなくタイムアップ。今年は横浜が相手というシチュエーションこそ違ったが、同じような位置から、同じ左利きの天野純選手にFKからゴールを許した。
 
 ファウルでセットプレーを与えた時に、脳裏には昨季の絵が浮かんでいた。それで失点し、「これも一緒か」と。ただ、随分と違う心持ちでゲームを眺められた。「今年はここからやってくれるんじゃないか」と自然と思えた。
 
 それが正解だったように怒涛の勢いで攻勢に転じて、選手たちを頼もしく感じたし、また今季に取り組んできたことは間違いじゃなかったという想いもあった。相手を圧倒した90分間となったが、結果として引き分けに終わったのだから満足してはいけないのは十二分に理解している。
 
 試合終了を告げるホイッスルが鳴った瞬間は「ここまで戦えるようになった」という充実感と、「勝ち切れないのか」という悔しさが交錯していた。
 
 それでも、ACL出場権を争っているチームに対して「ベガルタ仙台はこういうサッカーができるんだ」と見た人たちに思ってもらえる試合だったと思うし、表現したいものはしっかりとピッチ上でできていた。今のサッカーにチャレンジして良かったと改めて思える日となった。
 
 横浜戦もそうだったのだが、最近のユアテックスタジアム仙台での試合である"変化"を嬉しく思っている。それはファン・サポーターと「サッカーの楽しさ、本質を共有できている」という点だ。

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