【コラム】戦術もレギュラーも8割方見えた!? W杯へハリルは何をどう見極めたか

2017年11月16日 加部 究

規律正しいハードワーク以上のインパクトを残すのは難しい。

指揮官好みのプレースタイルを持つ長澤は、長谷部の状況次第で代役に最も近い存在か。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

 すでに最終予選終盤から見えていたことだが、ロシア・ワールドカップ本番へ向けての戦術はもちろん、レギュラーメンバーも8割方固定された印象だ。4-3-3で、オプションは中盤の三角形を引っくり返すしかない。トップもポスト役を配す以外に、最前線に動いて起点を作るなどのバリュエーションを加える様子はなく、大迫勇也の控えは杉本健勇が濃厚だ。


 今回2戦を通じて立証されたように、GK川島永嗣から4人の最終ライン、MFでは井手口陽介、山口蛍、左FWの原口元気、そして大迫は当確。中盤は長谷部誠のコンディション次第では、新しい戦力が食い込む余地があるが、ここにも創造的なタイプが優先される確率は低い。直前の国内2戦でゲームを組み立てた小林祐希を外した経緯を考えても、今回初招集の森岡亮太がポジションを確保するとは思えず、今のところ長谷部の代役に最も近いのは長澤和輝だろう。また右FWは久保裕也と浅野拓磨を併用中だが、本番での対戦相手との力関係を考えれば裏を狙える浅野の起用が増えそうだ。
 
 基盤になるのはデュエルでしっかり戦う隙を作らない守備で、奪ったボールは直線的にゴールへと運ぶ。攻撃はリスク回避を最優先し、パスの出しどころを失うと、最終ラインからの縦へのロングフィードが目立った。
 
 ベルギーを「大きなライオン」と見れば大善戦になるが、指揮官がワールドカップ予選でのオーストラリア戦の初勝利を「歴史を作った」と殊更強調するなら、この対戦も初黒星ではある。確かに相手のミス絡みで何度かのチャンスを迎えたが、意図して組織的に崩したものは少ない。その点では、4年前にブリュッセルで勝利した同カードと比べれば、当然内容も後退している。率直に本大会へ向けて、惨敗を避けるという意味で善戦する準備は整いつつあるが、客観的には規律正しいハードワーク以上のインパクトを残すのは難しい。
 
 ただし指揮官は、そこでベクトルを合わせるしか世界に食い下がる道はないと見ており、スターなき代表はボールの落ち着きどころを失くしながらも、ひたすら献身的なファイトを続けている。

次ページ「ゲーム支配」に見切りをつけた指揮官は「闘う」グループでロシアへ向かう。

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事