【番記者通信】明るい未来への第一歩を踏み出したネラッズーロ|インテル

2014年05月04日 サルバトーレ・リッジョ

EL出場権獲得が決まってからトヒルの手腕が発揮され始める

いきなり多額の資金を投下するのではなく、クラブの経営体力を着実に強化するというトヒル(右/左はモラッティ前会長)の方針は好意的に捉えられているようだ。 (C) Getty Images

 インテルというブランドの再強化、収益の増加、そして上位を目指すための戦力の再整備――。
 
 これが、エリック・トヒル会長の提示したインテル復活のプランである。昨年11月にクラブの筆頭株主となり、マッシモ・モラッティ前会長との長い会談の末にクラブのオーナーとなったインドネシア人実業家は、このようなプロジェクトを明らかにした。
 
 カルチョの世界に身を投じてから、トヒルはインテルの将来について明確なビジョンを描きつつ、クラブの改革に着手。4月末にトヒルはミラノを訪れ、クラブ経営に関わるたくさんの仕事を処理している。
 
 クラブにとって、さしあたっての課題はふたつある。ひとつは、クラブの負債を減らすこと。新経営陣は頂点に返り咲くまでに3か年の強化プランを立てているが、「8000万ユーロに迫るといわれる負債を解消しなければ、復活にはもっと年数がかかる」と、トヒルは4月の株主総会で訴えた。
 
 そしてもうひとつは、来シーズンを睨んだ補強だ。インテルがヨーロッパリーグ(EL)出場を決めて(セリエAで5位以内に入ること)、来シーズンの具体的な目標が立てられそうになったところで、本格的なチームの補強を進める。これはインテルのブランド力を強化することにもつながり、アジアマーケットに影響を与えたり、スポンサーの興味を引いたりするためにも必要なことだと、トヒルは明言している。
 
 来シーズンに向け、すでにインテルはマンチェスター・ユナイテッドのDFネマニャ・ビディッチの獲得を決めているが、ブランド力アップのために攻撃のタレントの獲得は不可欠だ。そこでターゲットとなるのは、ナポリのMFマレク・ハムシク、FWでいえばマンチェスター・シティのエディン・ゼコ、チェルシーのフェルナンド・トーレスといったところだ。
 
 投資のための資金は、EL出場権の決まった時点で増強されるか、アンドレア・ラノッキアかフレディ・グアリンの売却、あるいは2009-10シーズンにインテルに三冠をもたらしたベテラン勢(つまりは高給取り)の引退・退団によって、捻出される見込みである。
 
 明確な強化プランの下、将来の見通しは明るいとも言える。ただこれらの目標は、段階を追って到達すべきものである。さしあたって来シーズンは、セリエA3位以内とチャンピオンズ・リーグ出場権獲得を目指して戦うことになるだろうが、もしそれが1年で実現しなかったとして、すぐに悲観的になってすべてを投げ出してしまっては、明るい未来はない。収益を出してクラブの経営体力を付けるためには、たゆまぬ努力でインテルブランドの成長を図っていかなければならないのだ。
 
 現在、クラブは新スタジアムの建設か、あるいはサン・シーロの専有化、およびリニューアルのいずれかを検討している。収入を増やすためには、やはり"ハコもの"の整備も必要だろう。ここでも最終的にどういう判断を下すのか、トヒルの決断に注目が集まる。
 
【記者】
Salvatore RIGGIO|MESSAGGERO
サルバトーレ・リッジョ/メッサッジェーロ
1983年ミラノ生まれ。データスポーツの編集員を経て、現在は一般紙『メッサッジェーロ』のスポーツ担当としてミラノ地域を受け持つ。インテルのみならずミラン、さらに両チームの下部組織も精力的に取材し、評価を高めている若手記者の筆頭。
 
【翻訳】
神尾光臣
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