【番記者通信】ポドルスキをどう扱えばいいのか……|アーセナル

2014年05月02日 ジェレミー・ウィルソン

抜群の得点力を誇りながら、守備では穴となる悩ましい存在。

ゴールゲッター、ムードメーカーとしてチームに貢献しながらも、その立場は微妙……。サッカーとは難しいものである。 (C) Getty Images

 今シーズンのアーセナルで評価が最も分かれるのは、ドイツ代表のルーカス・ポドルスキだろう。
 
 ポドルスキの最大の長所は、決定力の高さにある。出場した22試合で12ゴールをマークし、124分に1点のペースで得点を重ねた。彼の得点率(※1ゴールあたりの出場時間)は、セルヒオ・アグエロ(マンチェスター・シティ)、ルイス・スアレス(リバプール)、ダニエル・スターリッジ(リバプール)、デンバ・バ(チェルシー)に次ぎ、プレミア5位の高さ。もちろん、アーセナルではトップだ。ストライカーではなく、左サイドMFでの出場が多いことを加味すれば、その決定力は称賛に値するだろう。
 
 しかしアーセン・ヴェンゲル監督は、このドイツ代表選手をなかなか絶対的支柱に据えられない。理由は、守備意識の低さにある。攻撃マインドが強い一方で、ディフェンスを疎かにする悪癖が見えるのだ。実際、ポドルスキが先発すると、きまって対戦チームは彼のいる左サイドを徹底的に突く。つまり、ポドルスキの起用は、アーセナルにとって諸刃の刃なのだ。
 
 その持ち味を活かしながら、なおかつリスクを軽減するため、フランス人指揮官はポドルスキをストライカーとして起用するなど、工夫をこらした。しかしその結果、周りとうまく連係できず、今度は前線で孤立してしまった……。
 
 クラブとポドルスキの契約期間は残り2年。本人は契約を遵守すると言いながらも、来シーズンからブンデスリーガ1部に復帰する古巣ケルンへの移籍を否定してはいない。
 
 おそらく、守備と規律を重視するジョゼ・モウリーニョのような監督なら、ファン・マタをマンチェスター・ユナイテッドに売却したように、ポドルスキと袂を分かつことも厭わないだろう。しかしポドルスキの攻撃力を高く評価しているヴェンゲル監督に、そういった非情な判断が下せるだろうか。
 
 この夏、28歳のドイツ人の動向に注目が集まりそうだ。
 
【記者】
Jeremy WILSON|Daily Telegraph
ジェレミー・ウィルソン/デイリー・テレグラフ
英高級紙『デイリー・テレグラフ』でロンドン地域を担当し、アーセナルに精通。チェルシーとイングランド代表も追いかけるやり手で、『サンデー・タイムズ』紙や『ガーディアン』紙にも寄稿する。
 
【翻訳】
田嶋康輔
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