【選手権予選】復活を遂げた矢板中央…きっかけは部室の壁に刻まれた“ひとつの言葉”

2017年11月05日 松尾祐希(サッカーダイジェストWEB)

今季は県内無冠。実力とは裏腹に勝てない日々が続いた。

2年ぶりの選手権に挑む矢板中央。目ざすは過去最高の8強を超える成績だ。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

 栃木の名門校が全国の舞台に戻ってくる。
 
 11月4日、選手権の予選決勝が行なわれ、佐野日大を3-0で下した矢板中央が栃木の代表校に決まった。
 
 一昨年まで3年連続で冬の大舞台に姿を見せていたが、昨年はインターハイに出場するも、ここ10年で6度の出場を誇っていた選手権は出場を逃した。チームは雪辱を果たすべく新たなスタートを切ったが、春先から県内でよもやの苦戦を強いられる。新人戦こそ準優勝だったが、関東大会予選は初戦でPK戦負け。覚悟を持って挑んだ直後のインターハイ予選でも、準決勝で敗退してしまう。とりわけこの敗北は、「しっかりと練習をして挑んだだけにかなりショックだった」と稲見哲行(3年)が話すほどの大ダメージだった。
 
 とはいえ、今年のチームが実力不足なわけではない。高橋健二監督が「それぞれ高さやテクニックがある」と言うように、個性豊かな選手たちがずらりと居並ぶ。指揮官が「堅実な選手」と評する主将の稲見、同じく「ハードワークができる」と語る松井蓮之(3年)のダブルボランチ。最終ラインを束ねるCBの白井陽貴や最前線に入る190cmの大型ストライカー・望月謙の2年生コンビ。センターラインだけではなく、他のポジションにも頼もしい選手たちが控える。事実、予選開幕前の時点では県リーグ1部で首位を快走。ライバルを寄せ付けない強さを県内では見せていたのだ。
 
 しかしトーナメントになると、チームは勝負弱さを露呈してしまい、頂点に立てなかった。負のスパイラルから抜け出すきっかけとなったのは、インターハイ予選敗退後の出来事だ。チームリーダーのひとりである松井は当時をこう振り返る。

「準決勝で真岡に負けたことは大きかったし、あれがみんなの気持ちを高ぶらせた。あの日は本当に『もうだめだ』見たいな感じだったので」
 
 奈落の底に突き落とされた矢板中央。その時、偶然目にしたものがある。部室の壁に書いてあった言葉だ。

「冬こそ自分たちが笑う」
 
 最初は、誰が筆を走らせたものか分からなかった。ただ、そのメッセージは今の自分たちにしっくり来るものだった。稲見もこれを見て、決意を新たにしたという。

次ページ2年前の夏に書かれた言葉は主将だったあの…

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