【現地発】メッシの信頼も即座に勝ち取る! バルサ新監督の卓越したマネジメント能力

2017年10月25日 エル・パイス紙

経験に基づいた指導理念とシンプルで心に響く言葉で。

バルベルデ新監督(右)はメッシ(左)をはじめ選手の信頼をすぐに掴んだ。(C)Getty Images

 ロシア・ワールドカップ南米予選の最終節、敵地のエクアドル戦で圧巻のハットトリックを達成してアルゼンチン代表を本大会出場に導いたリオネル・メッシが、バルセロナに帰還して初練習に参加した時の出来事だった。エルネスト・バルベルデ監督は上機嫌のエースに遭遇すると、がっちり握手を交わし、軽く背中を叩いた。なんでもない光景だったからこそ、両者の間に存在する強固な信頼関係が伝わってきた。
 
 バルサでのメッシは、フランク・ライカールト政権時代に鮮烈のプロデビューを飾ると、ペップ・グアルディオラの下でフットボール界の頂点に立ち、ルイス・エンリケによってプレースタイルを成熟させた。
 
 その傍らアルゼンチン代表では、ディエゴ・マラドーナから世界ナンバープレーヤーの重圧に打ち勝つ極意を授かり、アレハンドロ・サベージャの下でブラジル・ワールドカップ準優勝を果たした。そしていま、紆余曲折を経てホルヘ・サンパオリ率いるアルゼンチン代表のワールドカップ出場に絶対的な貢献をして見せた。
 
 その他にも故ティト・ビラノバ、ヘラルド・マルティーノら様々な監督の下でプレーし、30歳を迎えたメッシは、心身ともにまさに成熟期を迎えている。
 
 それは逆に言えば、それだけメッシの心を動かすことが難しくなっていることの裏返しでもある。しかし、バルベルデは常識と経験に基づいた指導理念とシンプルで心に響く言葉で、背番号10の信頼とリスペクトを勝ち取った。この天才が絶対的なエースとして君臨するバルサでは、それはチーム全員とも良好な関係を構築したことを意味する。
 
 今夏にルイス・エンリケの後釜として招聘されたバルベルデのインテリジェンスの高さは、記者会見でも垣間見ることができる。今シーズンのバルサはチャンピオンズ・リーグで3戦全勝のグループD1位を維持し、ラ・リーガでも開幕以来トップを快走。9節のマラガ戦を前日に控えた記者会見で、監督に就任してから節目の100日を迎えた心境を尋ねられると、指揮官はこう答えた。
 
「チームのパフォーマンスには10点満点をつけたい。チームが成功すれば、監督も成功したことになる。ただ残り265日ある。不安と戦う毎日はまだまだ続いていく」
 

次ページ称賛の声にもあくまで冷静さを失わない。

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