【現地発】久保裕也が待望の一発にも納得していない理由とPKでの一騒動

2017年10月25日 中田徹

自らの先制ゴールの後にPKキッカーを巡り、チームメイトとひと悶着。一体なぜ?

開始早々にシーズン3点目を決めた久保。しかし、試合後に漏らした言葉は不満げなものだった。 (C) Getty Images

 ヘントの久保裕也が10月24日(現地時間)に行なわれたベルギーリーグ12節のオイペン戦で先制ゴールを決めた。開始わずか3分だった。
 
 チームも前半のうちに2ゴールを積み重ね、3-0で快勝しただけに、久保も「前半の早い時間帯で点が獲れたので、それで結構(チームに)流れが来た気がしますね」と自身の先制弾がチームに勢いを付けたと手応えを語った。
 
 前回の国際マッチウイーク直前、10月1日の対クラブ・ブルージュ戦で久保は1ゴールを挙げたものの、本人が「消える時間が長い」と反省の弁を口にするほど、チャンスに絡む場面がほとんどなかった。
 
 しかし、オイペン戦の久保はパス・アンド・ムーブを武骨なまでにこなし、オフ・ザ・ボールでも足をほとんど止めなかった。敵のボールホルダーに対するアプローチも速く、カウンターを仕掛けるシーンでは、何度か無駄走りになりながら、貪欲に相手ゴール前に顔を出した。
 
 軽率なミスがいくつかあったのは気になるところだが、クラブ・ブルージュ戦(9節)、そして3日前のコルトライク戦(11節)と比較しても、久保がゲームに関わる時間帯は圧倒的に長くなった。
 
 ベルギーリーグ挑戦2年目の今シーズン、序盤戦で躓いた久保に復調の兆しが見えてきているように感じるが、久保自身は、「自分の中では、まだ消えている時間が多い気がしています。そんなにボールに触ってないような気もしていますし……」と、まだ納得してない。
 
「しかも、もう少しゴール前の決定的なシーンに絡みたいなというのがありますよね。組み立てとか、あまり関わらなかったとしても、前のところでもっと関われたらという意識は持ってます」
 
 このオイペン戦で、ヘントは前半のうちに2回もPKを奪い、2度とも左ウインガーのモーゼス・サイモンが決めていた。
 
 2度目のPKをサイモンが蹴る直前、久保は執拗に「キッカーを譲れ」と迫っていた。結局、サイモンはボールを渡さず、ボールをセットした。そんなナイジェリア代表FWがキックの助走に入ってからも、久保は苛立ちを隠さなかった。
 
 そんなに久保はPKを蹴りたかったのだろうか?
「いや、僕じゃなくて、ロマンに蹴らせてほしかったんです」と意外にもウクライナ人FWロマン・ヤレムチュクの名前を出した。
 
「ロマンがPKを獲ったので。サイモンは一回、PKを蹴ってたし、ロマンも点を獲れば乗っていけると思ったんです。それで『ロマンに譲って』とずっと言ってたんですけれど、結構、(サイモンの)エゴが強かった」
 
 ヘントの中でPKキッカーの優先順位は、サイモンが1番手で、久保が2番手だった。それでも、久保は今シーズン、1ゴールしか挙げられていないヤレムチュクを慮ったのだ。
 
 それでも、結果オーライということなのだろう。
「サイモンが決めたんで良かったです」

 そう言って久保の笑顔が弾けた。
 
取材・文:中田徹

【動画】久保裕也が先制点奪取で今季3ゴール目! ヘントは3発快勝|ヘント3-0オイペン
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