【横浜】齋藤&マルティノスの"二枚看板"を欠くなかで取り組んだ、新たな人員配置の手応えは?

2017年10月15日 藤井雅彦

右サイドはスムーズさを欠いたが、左サイドは機能した。

天野は「自分たちのサッカーでチャンスを作れていた」と手応えを口にした。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

[J1リーグ29節]横浜1-1大宮/10月14日/日産ス
 
 齋藤学の長期離脱を受けてイッペイ・シノヅカが右サイドハーフでリーグ戦初先発を飾り、金井貢史と松原健の負傷によって遠藤渓太が右サイドバックとして今季初先発。右サイドは急造コンビとなったが、変化はそれだけにとどまらない。

 キュラソー代表としてカタール遠征に参加していたマルティノスは疲労を考慮して控えに回り、前田直輝が左サイドハーフを務めて左サイドバックの山中亮輔と初めて縦関係を形成した。
 
 齋藤とマルティノス。横浜の攻撃の中心を担ってきた両選手ともにいないスタメンは、この大宮戦が今季初めて。"二枚看板"を欠いての戦いぶりに注目が集まった。
 
 結論から言うと、右サイドはスムーズさを欠き、左サイドは流麗なコンビネーションを披露した。
 
 シノヅカと遠藤はいずれもドリブル突破を得意とする選手で、前者は初先発にもかかわらずアグレッシブな仕掛けで局面打開を試みた。試合後には「結果は出なかったけど良い部分もあった」と一定の成果を得ており、個人としては今後も武器になる可能性を感じさせた。
 
 一方で、遠藤との連係には課題を残した。シノヅカと同じようにサイドハーフを本職とする遠藤の持ち味は攻撃力にある。前方でシノヅカがボールを持った場面では果敢にオーバーラップを仕掛けたが、これが裏目に出る場面も。リスクを顧みることなく攻め上がったことで、背後に危険なスペースを与え、「自分のプレーでイッペイくんを苦しめてしまった」と反省しきりだった。自陣での守備時はマークの受け渡しがスムーズに運ばない場面も散見されたが、連係面に関しては一朝一夕で解決できる問題ではないだろう。
 
 対して左サイドは、左利き3選手のトライアングルが機能した。左サイドハーフに入った前田はドリブル突破を武器にしつつも、周囲と有機的に絡めるタイプ。トップ下の天野純が左サイドに流れ、左サイドバック山中がフォローする。今季序盤、齋藤や金井とトライアングルを形成していた天野は「楽しくできた。自分たちのサッカーでチャンスを作れていた」と1-1に終わった結果とは関係なく手応えを口にした。
 
 強いて課題を挙げるとすれば「トライアングルは作りやすい。でも、それによってゴール前の人数が少なくなるのは課題」と山中が指摘する構造上の問題だ。『左で作って右で決める』という形を確立できれば、左サイドのコンビネーションプレーはより威力を増すだろう。
 
 齋藤というリーグ屈指のアタッカーを失ってしまった。この穴を埋めるにはユニットによる組織的な攻撃しかない。シーズン最終盤に向けて、横浜は新たなテーマに取り組んでいる。
 
取材・文:藤井雅彦(ジャーナリスト)
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