FWが先か、キャプテンが先か――小林悠と中村憲剛、新旧リーダーの熱き「主将論」

2017年10月15日 志水麗鑑(サッカーダイジェスト)

“FWとして”の思いきりが生んだ2ゴール。

がっちりと握手を交わす小林(11番)と、中村(写真右)がキャプテン像を語った。写真:徳原隆元

[J1リーグ29節]川崎3-2仙台/10月14日/等々力
 
 仙台に2点のリードを許して迎えた82分、右サイドでボールを受けたエウシーニョがカットインから左足を振り抜き、強烈なシュートを決める。すると、家長昭博の退場もあり、等々力に響き渡っていた審判に対するブーイングが、一気に歓声に変わった。
 
「エウソンのゴールで等々力が蘇った時、(次に)決めるのは自分だと強く思っていた」
 
 その時の感情をこう語った小林悠が大仕事をやってのける。84分、右から中央に切り込み、低い弾道のミドルで同点とすると、87分には左サイドでボールを受け、ペナルティエリアの外から逆転弾を突き刺した。
 
「(ゴールの場面は)迷わずに打てた。3点目は相手に当たったが、打つことに意味がある。でも、正直しんどすぎてボールを運べなかったので、打っちゃえ!って(笑)。逆に力が抜けました。相手に当たりましたけど、入ればなんでもいいです」
 
 少しおどけながら2ゴールを振り返る小林。たしかに、本人が言うように思い切ってシュートを打ったことが得点につながった。これでキャリアハイとなる17点目を記録したが、報道陣から「キャプテンに就任した影響はあるか」と聞かれると、ハッキリと鋭く切り返した。
 
「それは最近、気にしていない。もう、キャプテンだからというのは気にせずに、今はFWだからという考えでやれている。FWとして点を取るから、チームを勝たせるキャプテンという発想。前までキャプテンが先にきていたことが、上手くいかない理由でもあった。そこを整理できているので結果につながっている」
 
 あくまでストライカーとして点を取ることが第一。背番号11は自らの役割をそう説くが、キャプテン就任直後のシーズン序盤は葛藤もあったようだ。
 
「シーズン最初の結果が出ない時は、やっぱりキャプテンだからもっと守備しなきゃとか、カバーリングに気を使わなきゃとか、ばっかり考えていた。なかなか自分のゴール数も伸ばせず、チームも勝てなかった。そこをFWとして割り切れた時から、点が取れるようになった」
 
 小林は考え方を変えたことで結果に繋がっていると明かす。その変化が起きたのは、あるインタビューがキッカケだったとも言葉を続けた。
 
「FWでキャプテンをやるって難しい。(FWとしては)パスが来なければ『出せよ!』とキレなければいけない時もある。(キャプテンとしては)チームの勝利、チームのためにやることを一番に考えている。で、ある取材の時にキャプテン像を聞かれて、その難しさを話したら、インタビュアーが『もっと"自分が自分が"っていうキャプテンがいても良いんじゃない』って言われて、そうだなって。そこから一気に考えを変えたことで、結果に繋がっている」

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