【番記者通信】「使用料300万ポンド」のクルトワの宙ぶらりん|チェルシー

2014年04月21日 ダン・レビーン

勝負の行方を左右する重要なファクター。

レンタル先のアトレティコで成長を遂げたクルトワは、所有元のチェルシーと対戦するCL準決勝に出場できるのか。 (C) Getty Images

 まるで離婚協議中の両親の間で揺れる子供のような状況――。ティボー・クルトワは、チャンピオンズ・リーグ(CL)の準決勝を前に、図らずも渦中の人になった。

 ベスト4に勝ち上がったチェルシーの対戦相手はアトレティコ・マドリー。そのアトレティコのゴールマウスを守る21歳のクルトワは、チェルシーが保有権を持っている。2011年夏にアトレティコに貸し出され、レンタル期間を二度延長して今シーズンが3年目。この3年弱で欧州を代表する若手GKに成長し、アトレティコの躍進に大きく貢献している。リーガ・エスパニョーラ最少失点を誇る堅守の中心で、レアル・マドリー、バルセロナの2強を抑えて首位に立ち、CLでベスト4に勝ち上がった原動力だ。

 アトレティコの選手として、クルトワはチェルシー戦に出場できるのか。両チームの対戦が決まってから、この若き守護神の存在がクローズアップされたのは、勝敗の行方を左右する重要なファクターだからだ。クルトワが出場できるかは、アトレティコにとって重要な意味を持つ。

 関係者によると、レンタル契約には次のような条項が含まれているという。
「アトレティコがチェルシー戦でクルトワを起用する場合、1試合につき300万ポンド(約5億2500万円)の支払いが必要」

 ただ、UEFAは対戦が決まる前から、そのような条項は無効だとの見解を示している。300万ポンドはとても支払えないとこぼしていたアトレティコのエンリケ・セレソ会長にとって、UEFAの介入は渡りに船だろう。

 いずれにしても、将来的な去就を含め、クルトワがチェルシーとアトレティコの間で宙ぶらりんの状態であることは間違いない。

 チェルシーとアトレティコは、今夏の移籍市場での"対戦"も興味深いところだ。チェルシーはアトレティコのCFジエゴ・コスタの獲得を画策し、アトレティコはクルトワのレンタル延長を目論む。D・コスタの交渉に絡んで、フェルナンド・トーレスの古巣復帰も囁かれている。

 両チームは基本的に良好な関係を保っている。移籍市場でのやり取りを考えれば、300万ポンドで関係をこじらせるのは、どちらにとっても本意ではないはずだ。

【記者】
Dan LEVENE|Fulham Chronicle
ダン・レビーン/フルアム・クロニクル
チェルシーのお膝元、ロンドン・フルアム地区で編集・発行されている正真正銘の地元紙『フルアム・クロニクル』のチェルシー番。親子三代に渡る熱狂的なチェルシーファンという筋金入りで、厳しさのなかにも愛ある筆致が好評だ。

【翻訳】
松澤浩三
みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事