【識者の視点】“小さな反乱を起こせる”小林祐希はハリルに重要なヒントを与えたか

2017年10月08日 加部 究

NZに傾きつつあった流れを落ち着かせ、日本の攻撃に再びリズムを与えたのが小林だった。

ニュージーランド戦では途中出場で攻撃にリズムをもたらした小林。相手に傾きつつあった流れを引き戻した。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部

[キリンチャレンジカップ2017]日本 2-1 ニュージーランド/10月6日/豊田スタジアム

 小林祐希が香川真司と交代出場したのは、ニュージーランドの同点ゴールが生まれた直後だった。
 
―― 先制する → それを機に相手が直線的にゴールに迫って来る → 流れを堰き止められずに逆転を許す――。
 

 様々なカテゴリーで、何度も見て来た日本代表の負けパターンである。最も象徴的なのが、2006年ドイツ・ワールドカップのオーストラリア戦だ。最近のオーストラリアは、どんな状況や時間帯でも丁寧に繋ぎ続けた。グラウンダーの攻撃で時間をかけてくれたから、自慢のデュエルも活きた。だが同じオセアニアでもニュージーランドは、当然違った。そして案の定、日本は混乱に陥る。長身のクリス・ウッドに同点弾を許した後も、シンプルに高さを意識した攻撃に対して不安定な守備を晒し、むしろ流れはニュージーランドに傾きつつあった。
 
 こういう状況で縦に速いカウンターを目指すばかりでは、劣勢か、ギャンブルのようにオープンな仕掛け合いにしかならない。そこでゲームを落ち着かせ、再び日本の攻撃にリズムを与えたのが小林だった。
 
 入って早々には、酒井宏樹のアバウトな縦へのフィードをしっかりと収めると、密集した右サイドで敢えて仕掛けて敵を釣り、タッチラインに開く久保裕也に余裕を与えてパス。今度は後方に下がり新しいパスコースを作ると、オープンなスペースが広がる左へとサイドを変えた。
 
 その後も約30分間、小林は集中を切らさずにパス&ムーブを繰り返し、シンプルに攻撃のスウィッチを入れ続けた。状況を見極め、フリーになり、ゲームを動かしていく。小林のワンタッチが入ることで、日本代表の攻撃が機能性を取り戻し、相手のバイタルエリアでボールが回り始める。さらにここで保持出来ているから、高い位置での奪取も可能になり、2次攻撃へとつなげることができるようになった。自ら試みた2本のシュートチャンスも、流麗な展開の中で必然的に巡って来ている。

次ページピッチ上には日本の時間を創り出すためのリーダーが必要だが……。

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