【伝説のW杯予選】「戦犯」から「英雄」へ――。ベッカムが決めた劇的FK

2017年10月05日 ワールドサッカーダイジェスト編集部

「負ければプレーオフ」という逼迫した状況で…。

土壇場でベッカム(右)がFKを叩き込み、ドローに持ち込んだイングランド。得失点差でドイツを上回り、2大会連続のW杯出場を決めた
(C)Getty Image

[2002年日韓ワールドカップ欧州予選・最終節]イングランド 2-2 ギリシャ/2001年10月6日/オールド・トラフォード
 
 2002年の日韓ワールドカップ出場を懸けた欧州予選は、クライマックスを迎えていた。最終節を前にイングランドはドイツと勝点で並び、得失点差では大きくリード。勝てばすんなり出場権を獲得できる状況にあった。
 
 ところが、すでに敗退が決まっているギリシャに終盤まで1点のリードを許す苦しい展開。同時刻にスコットランドと戦っていたドイツが、一足先にスコアレスドローで試合を終えていたのは朗報だったが、イングランドは1ポイントを積み上げる必要があった。
 
 後半ロスタイムも2分を過ぎた時、ゴールまで約30メートルの位置でイングランドにFKが与えられる。蹴るのはもちろん、デイビッド・ベッカムだ。
 
 文字通りのラストチャンス。いつも通りゆったりとしたステップから右足を振り抜くと、美しい軌道を描いたボールがゴール左隅に突き刺さった。劇的な同点弾にイングランドのサポーターで埋め尽くされたオールド・トラフォードは、興奮の坩堝と化した――。
 
 負ければ厳しいプレーオフに回らなければならない、その逼迫した局面で、得意のFKを決めてみせたベッカム。1998年のフランス・ワールドカップでディエゴ・シメオネに対する愚行に及んで退場となり、敗退の「戦犯」として非難を浴びた26歳のキャプテンが、イングランド国民の「英雄」になったのだった。
 
文:ワールドサッカーダイジェスト編集部
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