【現地発】ベイルの“らしいゴール”を生んだ「ジダンの信頼」

2017年09月21日 エル・パイス紙

チームにとっても待ちに待った得点だった。

ソシエダ戦でカウンターから豪快な得点を決めたベイル。本人もチームメイトも歓喜した。(C)REUTERS/AFLO

 9月17日のレアル・ソシエダ戦(リーガ・エスパニョーラ4節)、レアル・マドリーのガレス・ベイルが61分にチーム3点目となるゴールを決めると、ベンチから一斉に選手、スタッフたちが飛び出して祝福した。チームにとっても待ちに待ったゴールだったことが伺えるシーンだった。
 
 すでにマドリーが試合をコントールしていた時間帯の貴重な追加点ではあったが、値千金というほどのものではなかった。それよりも、最高時速が実に35.6キロに達するスピードで後方から敵をぶっちぎって70メートルを走破し、絶妙なフィニッシュでネットを揺らしたこの"らしい"ゴールを復調のきっかけにしてもらいたいという、チーム全体の願いが歓喜の輪から伝わってきた。
 
 普段のベイルはピッチ外でも孤立気味で、表情も決して豊かとは言えない。そんな彼が舌を出しながらチームメイトの抱擁を受ける姿からも、いつにも増した喜びの気持ちが滲み出ていた。
 
 そのゴールまでは、指揮官のジネディーヌ・ジダンがいつ彼をベンチに下げるだろうかという重苦しいムードがベイルを取り巻いていたが、得点を機に状況は一変。その後、再び豪快なスプリントを見せたかと思えば、守備にも奔走するなど、完全に吹っ切れたかのようなプレーを披露した。
 
 バルデベバス(マドリーの練習場)の関係者によると、ベイルのコンディションは現時点でまだ60%の状態だという。そんな中でもイスコがあの場面でパスを出したのは、ベイルなら必ずボールに追いつけるという確たる信頼関係が根底にあったからだ。「毎日一緒に練習をしていれば、ベイルのコンディションは把握しているはずだからね。コンディションが万全でなくても、ベイルのスプリント力はチーム随一だ」と前述の関係者も認める。
 
 ベイルは昨年11月、右足首にメスを入れた。2月中旬に戦列復帰を果たしたが、後に本人が認めたように回復を急ぎすぎたため、その後も練習、あるいは試合に臨むために痛み止めの薬を飲む日々が続いた。さらに4月下旬のクラシコで左足を痛め再び戦線離脱。地元カーディフ開催のチャンピオンズ・リーグ決勝戦でも、77分からの13分間しか出場機会が与えられなかった。

次ページジダンも「とても嬉しい」と笑みを浮かべる。

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