【現地コラム】ルーニー、古巣相手に大敗…マンUの「偉人」はエバートンの「超人」にあらず

2017年09月18日 山中忍

崩れゆくチームを見つめるルーニーの胸中は…。

相手DFに自由を与えてもらえず、思うようなプレーができなかったルーニー。天を仰ぐベテランFWは一体、何を思ったか……。 (C) Getty Images

 この夏、「心のクラブ」への「夢の移籍」を叶えるため、マンチェスター・ユナイテッドを退団したウェイン・ルーニー。しかし、エバートンのFWとして舞い戻った9月17日のオールド・トラフォードで彼を待ち受けていたのは、大敗(0-4)という悪夢だった。
 
 昨シーズンまで14年間慣れ親しんだホームで、ルーニーはクラブ史上最多253得点を記録したマンチェスター・Uの「レジェンド」として、それに相応しい表敬と歓待を受けた。
 
 両チームの入場時、アウェーチームの先発メンバーの後ろから5番目で入場したベテランFWには、四方のスタンドから拍手が送られ、さらに82分にピッチを後にする際には、マンチェスター・Uのファンからもスタンティングオベーションと「ルーニー!」というコールで見送られた。
 
 だが、プレーとは関係のないこの2つの場面が、この試合におけるルーニーのハイライトだった。
 
 かつては自身も付けたキャプテンマークを巻いていた、同年代のアントニオ・バレンシアに鮮やかな先制のボレーを叩き込まれ、事実上、勝敗の行方が決した2失点目は、82分に自身がベンチに下がって無力な立場となってから1分後に決められた。
 
 そして、ルーニーに代わるストライカーとして、今夏にエバートンからマンチェスター・Uへと移籍したロメル・ルカクに3点目を奪われ、息の根を止められる。彼には、2点目のアシストも許した。
 
 さらに後半アディショナルタイム、4点目をアントニー・マルシアルを決められた時、テレビカメラは、瞬きもせずにピッチを見つめるルーニーを捉えた。
 
 彼の胸中にあったのは、「俺が決めていれば……」という自責の念か? 当人が、昨シーズンの多くをベンチで過ごした古巣との初対決で、健在ぶりをアピールすることを狙っていたのは想像に難くない。
 
 それにも増してエバートンは、直前のヨーロッパリーグを含めて公式戦では計8失点を喫して3連敗中という苦境に陥っており、ルーニーも今節を前に、ロナルド・クーマン監督との緊急ミーティングに呼ばれていた。
 
 この試合、ルーニーに全くチャンスがなかったわけではない。先制点を許したあとには、2度も決定機が訪れている。
 
 立ち上がりから前線で孤立し、後方からパスを受けてもすぐ2、3人の相手DFに囲まれていたルーニーだったが、20分にカウンターのチャンスと見るや、右サイドにボールを預けて駆け上がり、折り返しにダイレクトシュートを試みた。しかし、渾身のシュートはペナルティーエリアの淵からファーポストの外へと転がっていった。
 
 また、後半早々の46分には、やはり右サイドから背後に来たボールを足で引っ掛けるようにして進行方向に転がし、スライディングで奪い合いにも勝ってゴールを狙った。だが、咄嗟の左足シュートは、ニアポストで構える相手守護神ダビド・デ・ヘアの正面をついた。

次ページエバートンの問題は“弱気の”守備陣。

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