【現地コラム】ネイマールの後釜にはなり得ず!? バルサの希望を一身に背負うこととなったデンベレの不幸…

2017年09月15日 工藤拓

トップスピードに乗るためのスペースがないと…

20歳のスター候補としてなら申し分のない逸材であり、及第点以上の評価を与えられるところだが、ネイマールの穴を埋める即戦力の大物として加入したことが、デンベレにとっては大きな不幸である。 (C) Getty Images

 予想していたことながら、やはり即戦力として計算できる選手ではなさそうだ。
 
 ドルトムントからバルセロナに加入し、ネイマールの背番号11を受け継いだウスマンヌ・デンベレのことである。

 リーガ・エスパニョーラ第3節のエスパニョール戦のラスト20数分、ユベントス戦の70分間を見ただけで判断するのは、明らかに時期尚早ではあるだろう。
 
 しかも、エスパニョール戦では終了間際に右サイドからグラウンダーのクロスを通し、ルイス・スアレスの今シーズン初ゴールをアシスト。ユベントス戦ではDFを背負った状態で縦パスをキープし、リオネル・メッシに繋げて先制ゴールの起点となった。
 
 この2プレーだけを切り取れば、上々の滑り出しと言えないこともない。
 
 だが、この2試合で検証した総合的なパフォーマンスは、彼に対して加入前から抱いていた不安要素を裏付けるものだった。
 
 トップスピードに乗るためのスペースがあれば、彼は持ち前の突破力を発揮することができる。先述の2つのシーンも、やはり相手が間延びして周囲に大きなプレースペースが生じている状況でのプレーだった。
 
 一方で相手の守備組織が整い、スペースが限定された状況下でボールを受けた際のプレーからは、技術、判断力ともに物足りない印象を受けた。
 
 ネイマールのように静止した状態からでも能動的にフェイントをかけてマーカーを揺さぶり、周囲とのコンビネーションを駆使してアタッキングサードの密集地帯を突破できるようなスキルやプレーの引き出しは、少なくとも現段階では見せられていない。
 
 ジョゼップ・グアルディオラとティト・ビラノバの時代と比べ、近年のバルサは、中盤が間延びした状態でカウンターの応酬を仕掛けるシーンが多く見られるようになっている。その点では、彼のスピードに乗ったドリブル突破が活きるシーンがあることも確かだろう。
 
 それでもバルサとの対戦においては、今でも多くのチームが後方のスペースを消して堅守速攻策に徹してくる。
 
 そう考えると、彼のようなタイプはスターターとしてではなく、ユベントス戦の後半ように、相手がゴールを求めてラインを押し上げてきた際に切り札として投入するスーパーサブ的な使い方に限られてくる。

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