【小宮良之の日本サッカー兵法書】代表に不可欠な存在、長谷部誠。その不在を想定しておくべし!

2017年09月13日 小宮良之

たったひとりの選手の在、不在で破綻するシステム

長谷部が不可欠なのは、日本代表に限ったことではない。フランクフルトでも、彼の戦線離脱にニコ・コバチ監督は途方に暮れたものである。 写真:田中研治

 ヴァイッド・ハリルホジッチ率いる日本代表は、ロシア・ワールドカップのアジア最終予選、佳境のオーストラリア、サウジアラビア戦で同じシステムを用いた。
 
 4-3-3、もしくは4-1-4-1で、その特長は最終ラインの前にアンカーと呼ばれる選手をひとり置き、その前にふたりのインサイドハーフを配置するかたちにある。
 
 両サイドのアタッカーを中盤とするか、FWと認識するかで、システムの表現は別のものになるが、ハリルジャパンではアンカーがフォアリベロ(最終ラインの前のDF)としての色合いが強いだけに、やはり4-1-4-1と表記すべきだろうか。
 
 しかし同じシステムでも、オーストラリア戦とサウジ戦では、結果も戦い方も、全く異なるものとなった。その理由は、あるひとりの選手の在、不在にある。
 
 勝利を収めたオーストラリア戦では、長谷部誠がアンカーに起用されている。彼は適時にCBを補強するなど、守備のカバーをするセンスに卓抜したものがある。
 
 インターセプトやゴールに迫る力では他のMFよりも劣るが、周りの綻びを修復し、全体のポジションを修正できる。FW、MF、DFの3ラインをコンパクトに保てるし、プレッシング、リトリートを切り替えられる。長谷部自身がプレーする以上に、周りを活かせられるのだ。
 
 長谷部を欠いて一敗地にまみれたサウジ戦では、「不在の在」が明らかになった。
 
 代役を務めた山口蛍は、決して能力の低い選手ではない。トップ下のポジションに入っていく迫力やゴールを仕留める力、インターセプトの鋭さや球際の強度の高さなど、平均以上の力を持つ。
 
 しかし、起きた問題を自らのプレーで解決しようとすることでポジションを動かさざるを得ず、それが相手に隙を与えてしまう。失点シーンでも、直前に相手にボールを動かされ、ポジションを捨てたことによって、そのスペースを突かれた。
 
 たったひとりの選手の在、不在で、このシステムは破綻する。デリケートなシステムであり、Jリーグで採用しているチームはゼロに近い。

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