KAZUも背負ったエースの宿命――本田圭佑は「不要論」を打ち消せるか

2017年09月07日 佐藤俊

本田を見ていると、あの時のカズの姿と重なってしまった。

本田本人もサウジアラビア戦の出来を「全然ダメ」と反省した。写真:佐藤明(サッカーダイジェスト写真部)

[ロシアW杯アジア最終予選]サウジアラビア1-0日本/9月5日/キング・アブドゥラー・スポーツ・シティー

 本田圭佑が45分で姿を消した。
 
 ハリルホジッチ監督の予定通りということだったが、指揮官の温情起用に結果で応えられず、ほとんど何もできないままピッチを去った。動けない、ミスを連発、さらに攻守にスピードを意識したサッカーに抗うように「持ちたい」プレーで流れを淀ませてしまうのでは、かつてのカリスマ的な存在もその影響力を失うばかりだ。
 
 本田本人も「全然ダメ」と自らの腑甲斐ない出来を反省していたが、もはやその姿は「消えゆくライオン」である。そんな本田を見ていると、あの時のカズ(三浦知良)の姿と重なってしまった。
 
 1997年のフランス・ワールドカップ最終予選、カズは日本代表のエースだった。初戦のウスベキスタン戦では4ゴールを決め、エースとしての存在感を示した。しかし、その後はゴールを決められず、加茂周監督が解任されるなどチームが下降線を辿っていった。すると徐々にエースへの風当たりが強くなっていった。
 
 第3代表決定戦のイラク戦では試合途中でスタメンの中山雅史とともに城彰二、呂須比ワグナーと交代。まさかの2枚同時交代は衝撃的だった。調子が戻らない絶対的なエースの存在感が薄れ、もしかしたらもうカズの時代ではないかもしれないと思わせる象徴的なシーンだった。そして翌年、フランス・ワールドカップ直前合宿でカズはメンバーから落選した。
 
 本田も南アフリカ・ワールドカップで活躍してからカズ、中田英寿、中村俊輔に続く絶対的なエースとして、日本代表の中で確固たる地位を築いてきた。ザッケローニ時代は香川真司、岡崎慎司、長友佑都らとチームを引っ張った。
 
 ハリルホジッチ監督の体制になってからも自らと香川が攻撃の軸になり、彼らのプレーがチームの結果に大きな影響を与えていた。実際、最終予選のスタートになったUAE戦では本田が先制点を挙げ、「本田の時代はまだ続くな」と誰もが思ったはずだ。しかし、それ以降、徐々にパフォーマンスが落ち始め、存在感が薄れてきた。

次ページ絶対的な存在だった選手は並みの活躍では誰も納得しない。

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