【識者コラム】本田圭佑が新天地に選んだ“メキシコ”から日本は何を学べるか?

2017年09月04日 西部謙司

日本とメキシコは似ている。体格、パスワーク…。

ミランからパチューカに移籍した本田。このメキシコきっての強豪クラブに、すんなりフィットできるか⁉ (C)REUTERS/AFLO

 長年、欧州に活躍の場を求めてきた本田圭佑がメキシコの強豪パチューカに移籍。これまで日本人選手が海外クラブに新天地を求める場合、欧州がいわばファーストチョイスとなってきたが、これをきっかけに北中米も新たな選択肢となり得るのか。メキシコ・サッカーの特徴も含めて、サッカージャーナリストの西部謙司氏に見解をいただいた。
 
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 移籍は個人の問題なので、その行き先は北中米でもアジアでもアフリカでも当然ありだ。なかでもメキシコリーグはレベルが高く、代表クラスの選手が移籍して、プレー面やコンディションに支障が出るとも考えられない。欧州クラブに所属して試合に出られないよりは、ずっといいのではないか。
 
 本田圭佑のパチューカへの移籍で注目度が増しているメキシコは、以前から日本と似ている、あるいは日本が模範とすべき国だと言われてきた。体格が日本人に近く(といってもフィジカルは結構強いが)、パスワークを軸としたスタイルも共通している、というのがその理由だ。
 
 メキシコ・サッカーが存在感を増したのは、1986年に自国開催したワールドカップ以降だろう。名将ボラ・ミルティノビッチ率いる代表チームでエースを務めたのは、当時レアル・マドリーに在籍していたウーゴ・サンチェスだった。ワールドカップでベスト8入りしたのはその86年大会と、やはり自国開催の70年大会。94年のアメリカ大会からは連続出場中で、すべてベスト16入りを果たしている。ベスト8の壁が厚いとはいえ、グループリーグは確実に突破してくる実力国だ。
 
 メキシコの特長は正確なパスワークにある。この点ではスペインやブラジルといった強豪国にも見劣りしない。一方で、H・サンチェス以降は絶対的なストライカーが不在で、また国内リーグでプレーする選手が多いため、国際経験の不足も指摘されている。このあたりも日本と似ていると言われる所以かもしれない。
 
 だが、メキシコにも長身選手はいるし、かつてバルセロナで活躍したラファエル・マルケス(現・アトラス)のような経験豊富なタレントがいまなお健在で、さらにドリブルで局面を打開できる強烈な個の力を持ったアタッカーもいる。いわば日本代表の強化バージョンだ。

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