サプライズ招集はあるのか? 週刊サッカーダイジェスト編集長が日本代表候補合宿を斬る

2014年04月04日 谷沢直也(サッカーダイジェスト編集長)

公式戦に出場していないメンバーが食い込む可能性は…。

 アルベルト・ザッケローニ監督は時々、周囲が予想していた以上に思い切ったことをする。

 昨年7月、国内組のみで臨んだ東アジアカップに多くの初招集選手が含まれていた時も、11月のオランダ・ベルギー遠征で山口蛍や大迫勇也、森重真人をスタメンにチョイスした時もそうだった。それまではメンバーを固定し、Jリーグで急成長を遂げる選手をチームに組み込む作業をあまりしてこなかった指揮官が突如、「この選手が見たい」「この選手を起用してほしい」という世間の期待に応えるような抜擢をしてみせる。

 先日発表された4月7~9日の日本代表候補合宿メンバーも、意外性に溢れていた。

 ワールドカップ開幕の2か月前、リーグ戦の合間を縫った国内組のみによる3日間の短期合宿――。こうしたシチュエーションを考えれば、各選手のコンディションチェックを第一に、遠藤保仁をはじめとした既存の主力や、中村憲剛ら招集歴のある選手を優先的に集め、そこに数人のフレッシュな人材を上乗せするかと思われた。
 しかし、フタを空けてみれば「計算のできる選手や必要な情報をすでに持ち合わせている選手」(ザッケローニ監督)たちの招集を見送り、代わりに7人の初招集選手や、柴崎岳、長谷川アーリアジャスールら招集歴はあってもほとんどテストされてこなかった選手が集められた。まるで昨年12月に発した、「代表候補は63人いる」という発言を裏付けるかのような人選となったが、彼らのなかから果たして何人が5月12日に発表される本大会メンバー23人に加わるかを考えると、現実的には1人いるか、いないか、といったところだろう。

 いくら今季のJリーグで活躍しているといっても、やはり現在の代表監督の下で、公式戦に一度も招集&起用されていない選手がワールドカップの舞台に辿り着くのは難しい。

 それは過去の例を見ても明らかだ。98年の小野伸二、02年の中山雅史と秋田豊、06年の巻誠一郎、10年の川口能活と矢野貴章は「サプライズ招集」と言われてきたが、いずれも当時の代表監督の下でプレーした経験があった。

 またザッケローニ監督はチームの和を重んじ、特に守備面に関してはポジショニングなどの要求が細かい。吉田麻也が負傷離脱中であることを考えれば、山下達也や塩谷司ら今季のJリーグで輝きを放つ本格派センターバックの抜擢に期待は集まるが、現実的には伊野波雅彦や栗原勇蔵、今合宿に参加するなかでは水本裕貴がコンセプトの理解度で一日の長がある。

 それと同じように内田篤人が負傷離脱中のサイドバックでは駒野友一が地位を確立しており、長谷部誠が負傷離脱中のボランチでも青山敏弘の信頼度が高まっている。守備的なポジションで過去に公式戦に出場していない選手が本大会メンバーに食い込む可能性は、限りなくゼロに近いと言えるだろう。

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