【総体】準優勝・日大藤沢の桜旋風と決勝戦の誤算。快進撃はいかにして生まれ、止まったのか

2017年08月05日 松尾祐希

今大会最大のサプライズをもたらした日大藤沢。

優勝こそ逃したものの、初の決勝進出を果たした日大藤沢。冬に向けて大きな財産を手にした。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

「本田先生率いる流経を破るというのが、僕の最初の目標だった」(佐藤輝勝監督)
 
 快進撃を続けていた日大藤沢の挑戦は決勝戦で終焉を迎えた。このファイナルでも流経大柏に臆することなく、今大会の勝ち上がり同様に粘り強い守りを披露。そして、後半には切り札のFW三田野慧(3年)とFWギブソン・マーロン(3年)を投入して勝負を懸ける。この必勝パターンで勝機を窺うという流れまでは実に完璧だった。しかし、この日は終盤に失点を喫すると、攻撃陣も最後まで不発。惜しくも準優勝で大会を終える結果となった。
 
 大会前、下馬評で日大藤沢の評判は決して高くなかった。もちろん力がないわけではなく、DF安松元気(3年)を軸とした守りやFW柏木純(3年)などを擁した攻撃陣は実に魅力的。他にもトップ下に入る期待のルーキー・植村洋斗(1年)やMF比留間輝(2年)、左SBの中村翔輝(3年)といった実力者を並べた。
 
 ただ、全国レベルの強豪のなかで比較すれば、選手層の薄さやプレー強度の部分で疑問符が付いた。また、昨年は全国大会を経験していない。県リーグのみの経験値がどのように現われるかも不確定な要素のひとつだった。
 
 しかし、蓋を開けてみれば、優勝候補の一角だった昌平を2回戦で撃破。「負ける感じがしなかった」(三田野慧)という破竹の勢いで勝ち上がっていくと、準決勝では前年度王者の市立船橋をPK戦で下した。先手を取られながらも、ラストプレーで追い付いての勝利は実に劇的な形。決勝こそ流経大柏に惜敗したが、日大藤沢が今大会最大のサプライズをもたらしたのは確かだ。
 
 夏の宮城に巻き起こった桜旋風。この快進撃が運や勢いに任せた偶然の出来事だったのかと言うと、そうではない。各個人の技術、フィジカル能力に一戦一戦自信を深めていった結果である。
 

次ページ絶妙だった守備戦術と切り札の活用。

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