【総体】市船が衝撃の敗戦を喫したワケ。前回覇者を敗退に追い込んだ日大藤沢の戦略と敗者の弁

2017年08月04日 川端暁彦

「市立船橋の選手は素晴らしい。だから少しでも…」(日大藤沢・佐藤監督)

日大藤沢の同点ゴールが決まった瞬間、先制点の郡司も立ち尽くすしかなかった。写真:川端暁彦

 全国高校総体(インターハイ)は4日に決勝が行なわれ、流経大柏が9年ぶりの優勝を飾ったが、前日の準決勝では前年度王者の市立船橋が衝撃的な敗戦を喫して、大会から姿を消していた。

 市立船橋は初の4強進出となった日大藤沢と対戦。序盤からボールを支配して押し込む展開を作り、後半23分にはMF郡司篤也が先制点も奪い取った。だが、後半アディショナルタイムで迎えたラストプレー。GKからのロングキックのこぼれ球を交代出場したばかりの日大藤沢MF菊地大智に叩き込まれて、まさかの同点に。そのまま迎えたPK戦を落とし、連覇への道は途絶えることとなった。
 
 どこかでボタンを掛け違えているような、違和感のある試合内容だった。ボールは持っている。動いてもいた。しかし「テンポが悪い」(朝岡隆蔵監督)。理由の一つは、日大藤沢のやり方が想定と異なっていたことだろう。

 これは佐藤輝勝監督の狙いどおり。普段はボールにガツガツと奪いに行くところを抑えさせつつ、しかしまったく奪いに行かないわけではない「行くようで行かない。やらないようでやる」微妙な守備を徹底。不思議なノープレッシャーもあれば、油断していると突然取りに来る。そのリズムの変化を狙う。「市立船橋の選手たちは本当に素晴らしい。だから少しでも彼らの判断を迷わせられればと思っていた」(佐藤監督)。
 
 一人ひとりのボールを持つ時間が長くなったうえに有効でもない。おまけに「一番良い選手」と日大藤沢側が見込んでいたU-19日本代表の左SB杉山弾斗だけは意図的にプレッシャーをかけられており、他の選手を使って攻めさせるように仕向けられてもいた。日大藤沢が張った罠に入り込んでいた。
 
「前半から押し込んで、リスク管理もできていたし、(こぼれ球も)拾えていた」(杉山)
 
 杉山が言うように、内容が絶望的に悪いわけではなかった。事実として、日大藤沢の得点機は皆無。だがそれでも、徹底して中央を固めていた日大藤沢に対し、攻め切れない。何かがおかしいまま時間だけが過ぎていく。
 
 それでも交代出場の郡司がCKのセカンドボールからしぶとく決めた先制弾は「さすが市船」と思えるもの。エースFW福元友哉を出場停止で欠く影響でゴール前の強さ・怖さがなくなっても、セットプレーで勝負強さを見せるあたりは王者の資質あり、と見えた。「1点リードはまったくアンパイではない」(朝岡監督)のは確かだが、試合の流れとしては、このまま終わり"そう"ではあった。

次ページ「身をもって知らないといけない経験ができた」(市立船橋・朝岡監督)

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