【小宮良之の日本サッカー兵法書】A・マドリーの親善試合から見えたJリーグ順位争いのキーポイント

2017年08月01日 小宮良之

ネガティブ要素のオンパレードのなかで…

状況を把握し、そのなかでできることを全力でやり、最善の結果を残す。決して言い訳をせず、甘さを見せない姿勢が、地力の強さを養っていくのだろう。写真はトルーカ対A・マドリー戦でのアントワーヌ・グリエーズマン。 (C) REUTERS/AFLO

「難しい試合でした」
 
 そういう言い回しがある。これは当事者の感想だが、確かに"情状酌量の余地あり"というような試合は実際にあるだろう。
 
 例えば、それは酷暑という環境だったりする。気温30度以上でじめじめした空気が漂うピッチ……。選手の足は鈍るし、気力は削がれ、技術精度は落ちる。いつものようなプレーは望めない。
 
 あるいは、ピッチの状況も大きく影響する。芝生の丈が長かったり、凹凸があったりすることで、通常のプレーができないということもあるだろう。または、怪我人の続出で自分たちのコンディションが整わず、劣勢を余儀なくされることもある。
 
<どうしようもない>
 
 そういう悪い流れに引き込まれてしまうことはある。難しい試合――。自分たちの試合ができない、という意味を含んでいる。
 
 しかし逆説すれば、こんな時こそ、実力が試される。
 
「ピッチに入ったら、どんな時も戦う姿勢を示す必要がある」
 
 アトレティコ・マドリーの名将ディエゴ・シメオネは高らかに言う。
 
 シメオネ率いるA・マドリーは先日のプレシーズンマッチ(メキシコ遠征の初戦)、地元のトルーカと0-0で引き分けた。
 
 標高2600メートルという高地で、選手は思うように動くことができなかった。コンディションは明らかに悪く、合流間もないこともあって連係もままならず、試合勘に欠け、息も上がる……。まさに、ネガティブ要素のオンパレードだった。
 
 しかし、彼らは勝てずとも、負けることもなかった。
 
 ここに、「シメオネイズム」がある。
 
「我々にとっては(プレシーズン)初の試合だったが、それにしてはかなり良かった。この標高で戦うことは決して簡単ではないが、選手たちは必要に応じて順応していった。足の運びは重かったが、どうにか戦えていた」
 
「力を発揮するにはまだ時間が必要だが、親善試合であれ、公式戦であれ、我々は戦う姿勢を示すことができた。チームコンセプトは失われず、ラインはコンパクトで、ソリッドだった」

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