【総体】最初で最後のインターハイで、中村駿太はなにを掴もうとしているのか

2017年07月31日 川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)

巧みなポストワークとスペースメイクで攻撃を促進。

「まだ4か月しか経っていないのかって感じです」と語る中村。本人にしか分かり得ない、濃密な日々だったに違いない。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

 中村駿太にとっては、最初で最後のインターハイだ。
 
 3月、ジュニア時代から籍を置いてきた柏レイソルの下部組織から、青森山田への転籍を決意した。トップチームに昇格できないかもしれないという危機感があったにせよ、高体連の檜舞台で活躍し、自身のキャリアの糧にしたいという想いが去来した。
 
 あれから4か月。U-19日本代表のストライカーは、ついに憧れの舞台に立った。7月30日、2回戦で対峙したのはプレミアリーグWESTの強豪、東福岡だ。
 
 青森山田は序盤からペースを掴み、前半20分にMF田中凌太が先制。後半は修正してきた敵の反攻を受けるも、逆に後半9分に突き放し、リードを広げた。終盤は1点を返されてヒヤリとする場面もあったが、アディショナルタイムにMF郷家友太が3点目を奪って豪快に寄り切った。
 
 中村は4-2-3-1システムの頂点に陣取り、巧みなポストワークとスペースメイクでつねに攻撃を促進。得点こそなかったが、この日は名黒子に徹して快勝劇を支えた。
 
 坊主頭で"小さなロナウド"と呼ばれてきた中村だが、自身はスタイルが似るアルゼンチン代表のセルヒオ・アグエロやカルロス・テベスを参考していると話していた。そんな生粋の点取り屋に、青森山田での日々や高校サッカーへの想いを訊いた。
 
 やはり、発信力が半端ない若者だ。
 
――インターハイデビューは3-1の勝利に終わりました。まずは感想をお願いします。
 

「初めて東福岡という高校サッカー界を代表するチームと対戦して、すごくモチベーションも高く臨めました。個人的にはゴールという結果を残したかったんですが、あちらの2センターバックがずっと食いついてきてたんで、サイドバックとの間にけっこうスペースがあった。1点目や2点目はそこを味方のサイドの選手が突いて、フリーで決めてくれました。なので、それなりに貢献はできたかなとは思ってます。まあでもやっぱり、自分が決めれてたら、すっきりしてたとは思います」
 
──青森山田のチームメイトは、ボールを持ったらまずは中村選手を見て、早めに当てますよね。それをしっかり懐に収める。信頼関係があればこそかと。
 

「なにを置いても守備は、僕たちのストロングポイントだと思うんです。高い位置でしっかりボールを奪える。で、奪った時には誰かが助けてあげないといけない。僕はいちばん前にいるわけで、そこでちゃんとボールを受けれる動きをしなければいけない。すごく意識してますよ、そこのところは。チームを押上げなきゃいけないですから。何回かは失なってしまうんですけど、最近は少しずつその仕事にも慣れてきて、良くなってると思います」
 
――インターハイという大会は、独特の雰囲気がありませんか?
 
「そうですよね。去年まで僕はこの時期、クラブユース(選手権)に出ていました。インターハイは決勝をテレビで観たりニュースで結果を知ったりというところでしかなかったので、不思議な感じです。今日はすごいお客さんで、1回戦や2回戦でこんなに入るなんて信じられないです」
 
――今日はカードがカードだったんで特別多かったと思いますが。
 
「だとは思うんですけど、じゃあクラブユースで強豪同士が予選リーグで戦うとなっても、こんなには来ないですから。やっぱりモチベーションも上がるし、このなかで自分を表現したいって思わせてくれる。どんどん欲が出てきますよね。これまではそういう風に感じたことがなかったんで、すごく楽しかった」

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