長谷部誠はなぜ「ブンデスリーガで10年」生き残れたのか?

2017年07月18日 中野吉之伴

どのクラブでもどの監督にも評価されてきた真摯な姿勢。

ブンデスリーガではすでに10年を戦い、新シーズンは11年目となる長谷部。ここまで通用した心身の理由とは?(C)Getty Images

「彼にはチームのために身を捧げる準備ができていた。だが、メディカルスタッフはさらに悪化する危険を見逃すことができなかった」
 
 これは3月のバイエルン戦で膝を負傷した長谷部誠が手術を受ける必要があるという発表を受けた、フランクフルトのニコ・コバチ監督のコメントだ。
 
 さらに指揮官は、常日頃から模範的プロとしての振る舞いを見せる長谷部の離脱を心から憂いていた。どれだけチームに欠かせない存在だったか、そしてどれだけチームに大切な存在だったかが窺い知れる。
 
 2008年1月に浦和レッズからヴォルフスブルクに移籍して以来、ニュルンベルク、フランクフルトと活躍の場を移しながら、長谷部は10シーズンに渡ってブンデスリーガでプレー。怪我で離脱する直前のフライブルク戦では、あの奥寺康彦を超えるブンデスリーガ日本人最多出場更新(昨シーズン終了時点で236試合)という金字塔を打ち立てた。
 
 すべてが順風満帆だったわけではない。出場機会に恵まれない時期もあった。だが、それでも決して腐らない。どんな時でも100%の力でトレーニングに臨む。その姿勢をどのクラブでも、どの監督にも高く評価されてきた。
 
 練習時には先頭を走り、どんな時でもメディアの質問に穏やかに答える。チームメイトにも自分から歩み寄る。異国の地で異国の言葉で人と接することは、誰にでもそう簡単にできることではない。だが長谷部はミスを恐れず、ミーティングでも意見を隠さずに伝えるべきことは必ず言葉にした。言葉を覚えればコミュニケーションが取れるわけではない。コミュケーションをとることで言葉を覚えるのだ。
 
 メンタル面の安定も尋常ではない。チームが上手くいっていない時、多くの選手には心の揺れ動きが表層に現れるものだが、残留争いに追い込まれ、大事な試合で勝点を落とした後でも、長谷部は冷静さを失わない。そして次に向けてすぐに気持ちを切り替え、ベストの準備を取り組む。
 

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