【現役主審に問う|西村雄一×岩政大樹 #2】試合中に見ているポイントは?海外と日本では判定への反応が違う?

2017年07月19日 岩政大樹

レフェリーが選手以上の熱で対応すると「だいたい上手くいきません」。

西村氏は試合前に両チームの攻撃パターンを確認するという。(C)Getty Images

西村雄一 岩政さんは、鹿島での後半の5年くらいは、チームメイトを抑える声もかけていましたよね。選手が興奮している時に、岩政さんにお願いして落ち着くように収めてもらったことがあったはずです。
 
岩政大樹 ありました。試合中にそんな話もしましたね。
 
西村 レフェリーが直接選手に伝えても落ち着いてくれない時には、チームメイトの心理をコントロールできる人に託します。レフェリーと選手よりも、選手同士の信頼関係のほうが間違いなく厚い。選手には、いち早く通常の心理状態に戻ってもらって、次のゴールを決めてほしいですからね。
 
岩政 レフェリーの方は、準備やフィードバックはどうされていますか?
 
西村 基本的には、選手の皆さんと一緒に走り切れるだけのフィジカルを整えなければいけません。
 
岩政 結構、走りますもんね。
 
西村 そうなんです。常に攻撃の一員という感じで、90分間、攻撃しっぱなしなんです。
 
岩政 なるほど。
 
西村 ファウルをどう見極めるかの準備もします。そのために、両チームの攻撃の傾向を理解しておきますね。
 
岩政 両チームの攻撃を想定しておくんですか?
 
西村 ファウルが起きるのは、主に攻撃にかかる局面です。カウンターで点が取りたいチームは、対戦相手にカウンターをケアされます。ビルドアップするチームであれば、選手が息を合わせて出ていくところを止めにきます。両チームの攻撃の特長を理解しておけば、そうした場面を予測しやすくなります。

 あとは、選手に冷静になってもらえるように声掛けやジェスチャー、間を取ることに気を付けています。熱くなった選手に対し、我々がそれ以上の熱で対応すると、だいたい上手くいかない。まず我々が冷静でないといけません。
 
岩政 それではフィードバックは?
 
西村 試合終了後に行なっています。Jリーグの試合では、レフェリーアセッサーという評価者と一緒に判定を検討したり、後日ビデオ分析のフィードバックを受けたりします。加えて、シーズン前やシーズン中、シーズン終盤のタイミングで開催される研修会でフィードバックを受けます。

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