プロもファウルで止めるほど! J1川崎が追跡する“ジャイキリ”筑波大の超絶ドリブラー

2017年07月13日 竹中玲央奈

天皇杯3回戦・福岡戦でも川崎のスカウトふたりが視察に訪れる。

川崎U-18から筑波大に進学。三笘のその後の成長を古巣・川崎のスカウトもつぶさに追っている。写真:猪野史夏

 天皇杯という大会の醍醐味は言うまでもなく、"ジャイアントキリング"にある。7月12日に行なわれた3回戦では、J2の松本がJ1の鳥栖を破り、J3の長野がJ2岡山を下し躍進を見せているが、とりわけ際立つのがJ2のアビスパ福岡を倒した筑波大の快進撃だ。

 
 1回戦でJ3のY.S.C.C.横浜を、2回戦でJ1のベガルタ仙台を、そしてこの3回戦でJ2の福岡を破った筑波大は、Jクラブの全カテゴリーから白星を奪ったことになる。しかも、その3試合すべてのゲーム内容に共通するのが、格下のチームが格上を相手に講じる、守り抜いてカウンターというような"弱者の戦い"ではなかったことだ。アグレッシブな筑波大の戦いぶりは、完全にJクラブのそれを上回っていた。
 
「我々が隙を見せたとか入りが甘かったとかそういうものではなく、筑波さんのほうが上だったなと。ゲームを通してそう思います。彼らは戦っていましたし、球際、セカンドボールでチャレンジするところは我々を確実に上回っていましたし、勝ちに値するのは筑波さんだった」
 3回戦終了後、敗者となった福岡・井原正巳監督は完全なる"力負け"を認めていたのが印象深い。
 
 そんな筑波大の快進撃を語る上で特筆すべき人物を挙げるとすれば……。
 
 選手起用をはじめとするマネジメント力を発揮した小井土正亮監督の存在はたしかに大きい。1~3回戦すべての試合でネットを揺らし、現在5得点で大会の得点ランク1位につける中野誠也も外せないだろう。ただ、仙台を撃破した2回戦で、「Jクラブ相手にもやれる」という自信がチームにもたらされたことを考えると、その試合で2得点を挙げる活躍を見せた三笘薫の存在は非常に大きかった。
 
 川崎フロンターレの下部組織出身である三笘は、その当時から卓越した攻撃センスでチームを牽引してきた。同世代の中でも屈指の存在で、トップ昇格のルートも用意されていたのだが、熟慮の末に、大学進学を選択したという。
 
 来季からの加入内定が発表された脇坂泰斗(阪南大)に続き、大学での4年間を経て川崎に戻ってきてほしいという思いはクラブにもあるようだ。向島建と伊藤宏樹の両スカウトは彼の動向をしっかりと追っており、この天皇杯3回戦でもふたりが水戸まで足を運んでいた。
 
 1年生から主力の座を射止め、冬のインカレでは大学日本一を経験し、今夏に開催されるユニバーシアードに臨む全日本大学選抜の一員にも入った。下級生ながらここまで高い評価を受ける理由は、自身が持ち味とする"ドリブル"という武器があるからに他ならない。

次ページ元G大阪コーチの指揮官も「J1で通用する」と絶賛。

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