【モダンCB論】S・ラモスやピケが頂点に君臨する理由。カンナバーロは現代なら困難も?

2017年06月20日 片野道郎

CBにとって最重要なのはやはり「守備者」としての能力。

現代最高のCBと言われるピケ、S・ラモス、T・シウバ。いずれもあらゆる能力が高い。(C)Getty Images

 モダンフットボールにおいてセンターバック(CB)に求められる資質とは何か。この問いに答える前に、まずはポジションについての考察が必要だろう。
 
 攻撃と守備という2つの局面から成り立つサッカーというゲームにおいてCBは、全フィールドプレーヤーの中で守備の比重が最も高いポジションである。最大の役割は、チームの最後尾中央に位置してゴールをプロテクトすること。したがって、守備の局面においてプレー機会が訪れるのは、ここで相手の攻撃を防がなければ失点に直結するような状況になった時(あるいはひとつ間違えばそうなる時)だ。
 
 そこで求められるのは、目の前の敵にシュートを打たせないことであり、そのもうひとつ前の段階ではボールに触らせない(あるいは触っても前を向かせない)こと。つまるところ、CBにとって最も重要なのは、敵のFWを止める「守備者」としての仕事ということになる。
 
 守備者としてCBが直面する具体的なプレー状況は、大きく3つに分けることができる。そして、そのそれぞれにおいて、求められる資質は少しずつ異なってくる。
 
 ひとつはゴール前の狭いスペースでボールを巡って敵FWと対峙する状況、いわゆる「デュエル」だ。それがクロスやロングパスをめぐる空中戦であれば、高さ(身長、跳躍力)や当たりの強さ(体格、体重)で相手と互角に渡り合えることが必須条件。地上戦においても、最後の25メートルにおけるデュエルでは、まずフィジカルコンタクトの強さがモノを言う。レオナルド・ボヌッチ(ユベントス)、マッツ・フンメルス(バイエルン)、ディエゴ・ゴディン(アトレティコ・マドリー)といった大型CBは、まずこの点で優位に立っており、とりわけ空中戦では無敵に近い強さを誇っている。
 
 同じ対人バトルでも地上戦の場合には、フィジカルコンタクトの強さに加えて、狭いスペースでの反応性やアジリティーも重要になってくる。近年はどの国でも育成年代でコーディネーション・トレーニングが重視されるようになってきて、ジェローム・ボアテング(バイエルン)、ステファン・サビッチ(A・マドリー)、ジョン・ストーンズ(マンチェスター・C)、アレッシオ・ロマニョーリ(ミラン)などのように、180センチ台後半から190センチ台という大柄な体格に高いレベルのアジリティーを備え、小柄でクイックなアタッカーとの1対1も苦にしない大型CBが増えてきた。
 
 いずれにしても、ゴール前のデュエルではまずフィジカルで相手に負けないことが最低条件。この10年で大型化が進んだ結果、今や最低でも185センチの身長がなければCBは務まらない時代になりつつある。それ以下の身長でそれなりのレベルに達するためには、以下で見る他の資質において抜きん出ていることが絶対不可欠だ。

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